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ポール・グレアムの「反論する方法」

[...]うまく反論するとはどういう意味なのか? ほとんどの読み手は単なる中傷と入念に論じられた反論の違いを区別できるが、私はその中間の段階に名前をつけることは役に立つと思っている。なので、これは反論ヒエラルキー(DH: Disagreement Hierarchy)への試みである。

その反論ヒエラルキーが↓。レベルが上がるほど上等になる。

・DH0:中傷

・DH1:人格攻撃 

・DH2:論調に反応する

・DH3:反対する

・DH4:反論する

・DH5:論破する

・DH6:主張の中心点に反論する

反論レベル1:単なる罵倒

反論のなかでももっとも質の悪いもの。

ただ、もっとも頻繁に見られる反論でもある。

たとえば「この低脳が!!」と怒鳴る上司などがそうだ。

ただただ感情的に反応しているだけで、

何ら建設的な意見を言っていない。

このような反論は、完全に無視していいだろう。

少し表現力のある人であれば、

たとえば「あなたは少し考えが足りないのではないでしょうか?」

のようにもったいぶった表現をするかもしれない。

結局言っていることは同じで、単なる罵倒でしかない。

反論レベル2:人格攻撃

「彼は普段仕事ができないから、会議で言っていることも信用できない」

「彼は営業部だから自部門の利益を考えてそんなことを言うのだ」

というような反論は、人格攻撃であり反論としてはとても弱い。

主張の内容自体に反論すべきであって、彼が普段仕事で有能かどうかや、営業部かどうかは何も関係がない。

「彼は専門ではないのでこの件に関して発言する資格がない」というのも、ある種の人格攻撃だ。

専門知識がなくて間違ったことを言っているのであればその間違いを指摘してあげれば良いし、間違ってないことを言っているのであれば、 資格があるかどうかに関わらずその意見を聞くべきだろう。

反論レベル3:言い方批判

「そんなきつい言い方はないだろう」と、主張ではなくその表現方法に対して反論する人もいる。

罵倒や人格攻撃と同様、何の反論にもなっていないのだが。

彼らは言い方をやわらかくしたら、話を聞いてくれるのだろうか? たぶん罵倒か人格攻撃に反論を切り替えるだけではないだろうか。 要は言い方くらいしか批判が思いつかないのだ。

反論レベル4:単純否定

「そんなことはあり得ない」「話にならない」「常識だ」などと言うだけで、その理由を何ら示さない反論。

「これが良いデザイン?私は悪いと思う」のように、自分の感情だけで反論するのもこのケースにあたる。

デザインの一般的なルールに対して何がおかしいのかを指摘するべきなのに、自分の趣味で「悪い」と感想を述べているだけだ。

反論レベル5:反論の提示

レベル5以上でやっとまともに対応すべき「良い反論」にたどり着く。

反対の理由をしっかりと述べる。

そうすれば、話し手も再反論ができるから有益な議論になるのだ。

ただし、このレベルでは理由の信憑性が怪しいこともある。

「UFOはたしかに存在する、なぜなら私がこの目で見たし、友人達も見たことがあると言っている。オカルト雑誌でも特集が組まれている」といったように、曖昧で科学的でない理由でもいちおう反論にはなり得るからだ。

反論レベル6:主張の一部が間違っていることの説明

相手の言っていることを引用しながら、どこが間違っているのかを指摘する。

「いまあなたはダーウィンの発言を引用したが、そんなことをダーウィンが言ったという証拠はない」など、主張の間違っていることをたしかに指摘してはいるのだけれど、本題と関係のない重箱の隅をつつくような反論になってしまい、議論が迷走することもある。

反論レベル7:主張の本題が間違っていることの説明

完璧な反論のかたち。

相手の主張の核となる部分を指摘して、それに対して適切な理由を出して反論する。

「あなたの話の本題は〜だと思う。しかしそれは間違っている、なぜなら〜」という言い方になる。