■ 1. ビジネスにおける解像度の高低
- 解像度が低い状態:
- 考えや事実認識が粗い状態
- 顧客像がぼんやりしており、顧客の課題を曖昧にしか認識できていない
- 事例を広く・詳しく知らない
- 解像度が高い状態:
- 考えや事実認識が詳細な状態
- 顧客像がくっきりしており、顧客の課題を深掘りして整理できている
- 一事例を詳しく言え、かつ多くの事例を知っている
- 解像度が高い状態の定義:
- 一つの事象の原因や構造、流れを適切に要素分解している
- そのうえで、分解した要素の一つ一つについて詳しく言える
- 構造の中でどの要素が重要かを的確に見定められていることも解像度が高い要因となる
- 最も大きな影響を与えられる要素を特定できる状態
■ 2. 解像度を高める4つの視点
- 深さ:
- 一つの現象をどこまで深く詳細に把握しているか
- 症状と病因を切り分け、要因の根本原因を特定できているか
- 広さ:
- どれだけ広く原因や構造、可能性のある打ち手を把握しているか
- アプローチや視点の角度の多様さで広さが決まる
- 構造:
- 要素を分解するときの分解の筋の良さ
- 分解された要素間の関係性や相対的な重要性を的確に把握しているか
- 分け方や比較の方法の優劣も含む
- 時間:
- 過去や歴史を知っているか
- 将来の時間的な変化について洞察があるか
■ 3. 醤油の例による4つの視点の適用
- 安易な解決策の問題:
- 醤油がおいしくないという課題に対し、美味しい醤油を作るという解決策はほとんど洞察を生まない
- これでは良い解決策にたどり着けない
- 深さ方向:
- おいしくない原因として原料の質や発酵の不十分さを掘り下げる
- 広さ方向:
- 醤油が置かれている環境を意識し、酸化による劣化という原因まで視野を広げる
- 構造:
- 広げる時や深める時には、MECEや切り口など要素の構造や関係性を意識する
- 原料の質を大豆・小麦・食塩の質に分解する
- 時間軸:
- 今の課題が将来も課題であり続けるかを考える
- 課題の歴史的な位置づけを考える
- 5年後には食事の傾向の変化という別の課題が生じうる
- 課題の選択と解決策:
- 原因の候補が分かったら、その中で解決しうる影響度の高い問題に取り組む
- 課題に対する良い解決策案を複数作る
- 例として、醤油の小口販売や、容器を工夫して酸化を防ぐ案がある
- 2009年に酸化防止容器が登場した
- 課題を解像度高く把握すると、良い解決策に辿り着くことが多い
■ 4. 解像度が低い時の症状
- 抽象的・一般的な課題:
- 主に深さの不足から生じる
- 顧客の課題がぼんやりとしか把握できず、何にでも当てはまる仮説になる
- 「そうですね」としか言えないため、仮説として弱い
- 他業界でも頻繁に聞く課題や万人に当てはまる課題は、まだ解像度が粗いケースが多い
- 例として、情報がうまく流通していない、マッチングがうまくいかない等がある
- 起業家は困っているという課題も、何に困っているかを掘り下げる必要がある
- 具体性の薄さ:
- 主に深さの不足から生じる
- 課題が起こる文脈や5W1Hを詳細に言えない
- 具体例を一つも言えない、顧客のストーリーを詳しく言えない状態
- 誰がいつどこで課題に接し、今どう解決しているかが重要
- 防ぐには多くの具体例の引き出しを持つ必要がある
- 顧客の行動理由や文脈が想像でしかない場合も具体例の乏しさに起因する
- 「たとえば〇〇さんの場合は」と言えなければ要注意
- 説明の長さ:
- 主に構造の把握や深さの不足から生じる
- 長く説明しなければ伝わらない時は、まだ解像度が低い
- 説明の具体性が高くても、長ければ構造を把握しきれておらず重要なポイントが分かっていない
- 解像度が高ければ、構造に基づいて明確かつ簡潔に問題を言える
- 安易な解決策:
- 情報が足りないから情報メディア、人がいないから人のマッチング、といった発想
- 課題が残っているのには理由がある
- その構造を把握できていないか、課題の分析の深さが足りない
- 競合に対する認識の粗さ:
- 深さと広さと構造把握の粗さによる症状
- 競合に全部勝っているという認識は、普通起こらないため何かを見落としている
- 類まれな技術力があれば全部勝てる可能性はあるが、その場合もコスト高になる可能性が高い
- 競合はいないという認識は、顧客の課題の把握不足か業界の調査不足であることが多い
- 顧客に課題があるなら、他の手段で解決しているはず
- 本当に競合がいないなら、解決するほどの課題ではないため、この言葉自体に注意すべき
- 競合との比較軸の甘さ:
- 自社がすべて勝っている状態に近く、比較軸の設定が甘いことが多い
- 基本的に比較軸はトレードオフの関係にある
- 何かは勝っているが何かは負けており、それでも欲しい顧客がいると考える方が良い
- 計画の粗さ:
- 主に将来に対する広さと深さの不足から生じる
- 達成すべきところが分かっておらず、理由が言えない
- 短期的目標と長期的目標の関係性を明確に言えない
- 成功と言える達成度合いが曖昧で、数値目標を設定できていない
- 行動計画が適切なステップに分解されていない、または最短ルートを選んでいない
- 例として、最初は継続率を追うべきなのに、最初からMAUなどのグロースを狙う場合がある
- 原因は面倒くささの回避の場合も、他の打ち手を知らない場合もある
■ 5. 解像度が求められる領域
- 顧客、計画、業界の3領域で高い解像度が求められる
- 顧客の解像度:
- 顧客のペルソナや課題を構造的に深く理解できている
- 顧客の行動の流れをステップに細分化できている
- どの原因が相対的に重要か、どの順序で解決すべきかが分かっている
- 計画の解像度:
- 辿り着くべき目標が鮮明で、その理由を説明できる
- 目標の達成度合いを数値で言える
- 目標達成に向けてやるべきことと順序が見えている
- 全体の構造を見渡したうえで効果的な打ち手を選べている
- 開発の課題をデザインやサプライチェーンなど様々な側面から検討している
- 業界の解像度:
- 業界構造やバリューチェーンを広く深く的確に把握している
- 顧客の社内外のステークホルダーの関係性や力関係が分かっている
- 業界の歴史や事件、変遷が分かっている
- 特にB2Bスタートアップで重要
- 単に現場で仕事をしているだけでは身につかない視点
■ 6. 深さの高め方
- まず深さから:
- 基本的には多くの人が深さが足りていない
- 現場とインタビュー:
- 深さが足りない時は、何よりも数多く現場に行き、インタビューをする
- カスタマーマニアになる
- 単に顧客の意見を聞くのではなく、顧客の事実を基に自分で考えて洞察を得る
- 顧客の課題認識の甘さ:
- 顧客の多くは抽象度が高い、すなわち浅い課題認識しかしていない場合がよくある
- 顧客の言葉の裏の裏を探り、課題の背景にある本当の理由に気づく必要がある
- 顧客の医師という姿勢:
- 課題について症状と病因を切り分けて考える
- 表に出ているものはあくまで症状にすぎない
- Why So?の反復:
- なぜそうなのかを繰り返し自問自答する
- コンサルと同じく、自問自答の繰り返しで深掘りができるようになる
■ 7. Why So?による深掘りの例
- 起業家は困っている:
- 「そうですね」としか言いようがなく、解決策のアプローチも思いつかない課題設定
- 起業家はお金に困っている:
- 少し具体性が増したが、まだ一般的すぎる
- 起業家は資金調達に困っている:
- 人件費やバーンレートなど様々なお金の問題の中から絞り込み、解像度が多少上がった
- 上場前か上場後か、どのラウンドかが分からず、多くの起業家に当てはまる記述のまま
- 起業家はシード資金の調達ができなくて困っている:
- ラウンドを絞り解像度は少し増したが、多くの起業家が困ることであり一般的すぎる
- 起業家はシード資金調達のための情報が手に入らなくて困っている:
- 原因として情報に行きついた段階
- ここで情報提供のWebメディアを作るという解決策に飛びつくのは安直すぎる
- 解決策が安直すぎる場合も、課題の解像度が低いことが多い
- 安直な解決策は大抵機能しない
- 課題が生まれ、課題として残っている理由や構造を把握する必要がある
- 顧客インタビュー等でさらに深掘りする:
- 情報が検索エンジンで引っかからなくて困っている、という課題にたどり着く
- SEOに資源を集中させた資金調達支援ページを作るという仮説が立てられる
■ 8. How?による行動計画の深掘り
- 行動計画を立てる時はWhy?の代わりにHow?で深掘りする
- 最初の一歩がはっきりするまでHow?を自問自答する
■ 9. 良い問いを立てるための知識と訓練
- 知識の必要性:
- うまくWhy?やHow?を問うためには知識が必要であり、本を読むべき
- 良い問いを立てるには訓練と知識が必要
- 概念や言葉を知る:
- 概念や言葉は現実をうまく切り取るためのツール
- 多く持つほど、うまく分割も深掘りもできるようになる
- 言葉を多く持ち、その背景を知って切れ味も良くする
- 事例の分析:
- 一事例にこだわって分析することで、本当のWhyに辿り着くことがある
- Whyに辿り着くにはn=1分析などを試す
- 根気:
- 原因や理由はすぐには分からない
- スタートアップに値する隠れた真実は簡単には見つからない
- 根気強く取り組みながら独自の情報を得ていく
- 言葉による分割の例:
- 自信という事象は、自己効力感と自尊心に分割できる
- 自己効力感は、ある状況で特定のタスクをこなせるという自分の能力に対する認識
- 自尊心はいわゆる自己肯定感であり、ありのままの自分を尊重し受け入れる態度や感情
- 現実を的確に切り取れる言葉や語彙を増やすべき
■ 10. 広さの高め方
- 広さの不足:
- 広さの足りないツリーと十分に広いツリーでは構造の網羅性が異なる
- 広さを得る手段:
- 専門書や教科書、記事を読む
- 事例を知り、人に聞き、色々な見方を知る
- 多面的に顧客のことを知れているかが広さにつながる
- 前提を疑う:
- 課題の前提を疑う
- 問いのパターンを持つ
- 異化を意識的に行う
- 視座を変える:
- 顧客の視点で見る
- 上司の上司の視点で見る
- 時間軸を変えて見る
- 体験する、人と話す:
- 競合製品や新製品を体験する
- 新たなキーワードを探す
- 誰かと話す
- 近道はない:
- 広い視点を得るための近道はない
- 積み重ねることができれば誰にも負けない優位性になる
■ 11. 構造の把握方法
- 構造のパターンを多く持ち、構造化の手法を知る
- MECE:
- もれなくダブりなく (mutually exclusive collectively exhaustive) の略
- ロジカルに分けられる時はMECEに分ける
- 要素同士が複雑に絡む場合が多く、MECEにこだわらない時もある
- 因果関係や時系列:
- 因果関係で構造を把握する場合、基本的には時系列での把握になる
- ループになっていることもあり、システム思考などが応用できる
- バリューチェーンも時系列で構造を把握するもの
- 関係性:
- ステークホルダー同士、活動同士、概念同士の関係性を整理する
- どの要因が相対的に重要かを把握する
- パターン:
- 構造のパターンを知ることで、アナロジーを使って構造把握がうまくなる
- 分け方の切り口が優れた構造かどうかを決めることにつながりやすい
- 図にする:
- 構造は図にして把握する
■ 12. コーザリティ分析の例
- コーザリティ分析:
- 原因と結果のつながりを分析するツール
- 昼御飯の相手がいない例:
- 直接の原因として、近くに知り合いがいない、他人に声をかける勇気がない、が考えられる
- さらに、そもそも友達がいないという原因が考えられる
- 友達が少ない原因として、声をかける勇気がない、何を話したら良いか分からない、が考えられる
- その背景に共通の話題がないという原因があるかもしれない
- さらに広く見ると、友達が欲しくないという別の原因があるかもしれない
- 共通の話題がないことが根本原因なら、それを解決すればよい
■ 13. 構造整理のその他のツール
- バリューチェーン:
- 業界構造を整理する時に便利
- ステークホルダーマップ:
- 関係者を整理する時に便利
- 関係者や関係業者の関係性、力関係などを図示する
- 因果ループ図:
- コーザリティ分析に近いが、ループの概念を中心に考えるため異なる視点が得られる
■ 14. 時間の解像度の高め方
- 業界や顧客の歴史、物事の流れを知ることが時間の解像度につながる
- 変化を見る:
- 物事の変化を見る
- 時系列に並べて見る
- 流れを見る:
- 流れとして見る
- ステップやプロセスに分けて見る
- 因果関係を見る
- 歴史を振り返る:
- 過去の歴史を振り返る
■ 15. 解像度向上への姿勢
- 解像度はすぐには高くならない:
- 根気よく取り組み、現場に出るべき
- 時間の使いすぎへの注意:
- 解像度を上げることに時間を使いすぎない
- 適切な行動につなげるための十分な解像度を目指す
- とはいえ大抵の場合は解像度が低いので高めるべき
■ 16. 解像度の診断
- 十分な解像度の判定基準:
- 明確かつ簡潔かつユニークに仮説を話せるかでほぼチェックできる
- それをするには解像度を上げる必要があるため
- テンプレート:
- 埋めようとすることで主に広さと構造をチェックできる
- 表層的にも記入できるため深さはチェックできない
- 競合との比較表:
- 比較をどこまで細部に書けるかで深さをある程度チェックできる
- 多くの比較軸を挙げられれば解像度が高いと言える
- 原因分析:
- 顧客の行動理由や業界構造の理由をどの程度詳細に話せるかで、深さと広さをある程度チェックできる
■ 17. 診断ツールの具体例
- 顧客フォースキャンバス:
- Ash Mauryaによる、解決に値する課題を見つけるためのテンプレート
- Push、慣性、Pull、摩擦、次に起こることの5項目で構成される
- すべてを的確に埋められる状態は顧客の解像度が高いことを示す一例
- 解決策のテンプレート文:
- 状況、課題、対象顧客、製品名、製品ジャンルを埋める
- 利点、既存の代替品・競合、差別化要素を埋める
- 埋められ、かつユニークであるかを確認する
- テンプレートの注意点:
- 単に埋められるだけでは十分な深さがあるか分からない
- 埋めて満足しないようにする
- 競合との詳細な比較表:
- とにかく重要な比較軸を出してみる
- 軸の数と軸のユニークさで深さと広さが分かる
- 機能ではなく、顧客にとっての体験や価値をベースに作ると良い
- 顧客にとって重要な軸を上に、重視しない軸を下に並べる
- そうすることで自社が本当に勝っているかが分かりやすくなる
■ 18. 解像度を高めた後の行動
- 解像度を高めた後に最適な打ち手を選ぶ
- 解決できる課題や行動を選ばないと何も変わらない
■ 19. まとめ
- 深さ、広さ、構造、時間の4つの軸で課題を把握する
- 多くの人は深さが足りないため、深める作業を推奨する
- カスタマーマニアになるべき