この情報に圧倒される時代を、個人として、社会としてうまく切り抜けていくにはどうすればいいのか?
混乱を回避し、思考の罠に陥ることを防ぎ、愚かな行為や考えをふるいにかけるには?
本稿の著者3人は、そのためには今その信頼が揺らいでいる"科学的思考"、"科学的アプローチ"が何よりも重要であるという。そして、とりわけ有効だと思える概念やアプローチの総称として「Third Millennium Thinking(3千年紀思考/3M思考)」と名付けた。
現実について自分が知っていることを意識し始めると、すぐさま2つのことが明らかになる。ひとつは、自分には知らないことがたくさんあるということ。もうひとつは、未だに不確実なことがたくさんあるということだ。
不確実なことを前にすると、人は不安になる。私たちは人間で、生理学的に生存を前提にしたつくりになっている。よって、森に何が潜んでいるかわからなければ、進む足取りは当然慎重になる。
だが実のところ、自分が何を知らないかを知ることや、自分の知っていることはほんの一部にすぎないとの認識を持つことは、生存にはもちろんのこと、成功にも欠かすことができない。そうすると、科学的思考の基軸通貨に該当し、3M思考において中核を担う思考の使い方が自ずと必要になる。それは、不確実であるという現実を、自分がとる行動は正しいと確信することに利用するという考え方だ。
現実について知っていることにもとづいて決断を下さないといけないときもこれと同じで、自分が持つ知識はすべて事実であるとの思いに固執してはいけない。そうではなく、これについては強く信頼し、あれについては多少の疑いを残すというようにして、新たな事実が判明するたびに信頼の比重を変えるようにするといい。そうすれば、必要に応じて決断の内容を更新していくことができる。
これは非常に重要な割にめったに口にされない科学の要領のひとつで、理解が不確かな状態という「スキーの斜面」をうまく切り抜ける柔軟性が思考にもたらされる。そのように考えることを「蓋然的思考」と呼ぶ。