■ 1. 自由論の核心
- ミルの自由の定義: ミルの著書『自由論』で語られる「自由」は、「あるものからの自由」である。ミルが生きた19世紀には、人々は国家や宗教といった大きな権力からの自由を獲得しつつあった。
- 真の敵: 自由を追求する上で次に克服すべき敵は、多数派からの自由であるとミルは主張している。言論や思想の自由が認められた社会では、多数派の意見が絶対的に正しいと見なされ、少数派の意見が軽視・排除される危険性がある。
■ 2. 少数派の意見を尊重すべき理由
- ミルは、少数派の意見を尊重すべき理由を以下の2つのパターンに分けて説明している。
- パターン1: 少数派の意見が正しい場合
- 少数派の意見が正しい場合、その意見を大事にすべきなのは当然である。
- 歴史上、イエス・キリストやソクラテスといった偉人は、当時の多数派によって殺害されたという事実をミルは指摘する。この例から、私たちは多数派というだけで根拠もなく自分を正しいと思い込み、正義の名のもとに少数派を迫害する可能性があることを肝に銘じるべきである。
- パターン2: 少数派の意見が間違っている場合
- 少数派の意見が間違っている場合でも、私たちはその意見に耳を傾け、説得する努力をしなければならない。
- 「ドグマ」への警告: ミルは、議論や検証がなければ、どんなに正しい意見でも「真理」ではなく「ドグマ(お題目)」に成り下がると警告する。「人を殺してはいけない」という絶対的な真理も、その理由を自ら説明できなければ、いざという時に簡単に捨て去られてしまう。
- 真の理解: 少数派と向き合い、彼らを説得する過程で、私たちは多数派の意見がなぜ正しいのかを深く学び、その言葉に重みを感じることができる。
■ 3. 現代社会への警鐘
- 普遍的な教訓: 『自由論』の警告は、現代の社会的課題(男女平等、LGBTQ+、格差問題など)にもそのまま当てはまる。これらの問題はすべて、「多数派からの自由」という論点に集約される。
- 最後の敵: 私たちが真の自由を達成するための最後の敵は、他者ではなく自分自身である。私たちは、自分が多数派に属している時に、無自覚に他者を傷つける可能性を常に認識し、真の自由のために自らと向き合う必要がある。