■ 1. 頭の良いリーダーシップの落とし穴
- 背景: 筆者は、自衛隊の「優秀で頭の良い」指揮官が、部下からネガティブな評価を受けていることに違和感を抱いた。
- マイクロマネジメント: 頭が良いリーダーは、短期間で成果を出すために「あれをしろ、これはやるな」と細かく指示し、部下を管理する傾向がある。
- 組織の機能不全: このようなマイクロマネジメントが習慣化すると、部下は自ら考えることをやめ、「言われた通りにやる」ことが目的化する。結果として、組織の士気は低下し、長期的に見て弱体化する。
- 実例: 後年、この「頭の良い」自衛官が退官後に特定秘密を漏洩し、元部下を懲戒免職に追い込む事件が発生した。元部下は、その上司からの指示を断ることができないほどの恐怖感を抱いていたとされている。この事例は、優秀さが組織を破壊する結果につながる可能性を示している。
■ 2. 本物のリーダーシップのあり方
- 背景: 筆者は、かつて「ダメ指揮官」と呼ばれた元最高幹部の話を聞いた。彼は中隊長時代、細かく指導するも連戦連敗だった。
- アプローチの転換: 彼は連隊長に就任後、それまでの細やかな指導を一切やめ、部下自身に「どうしたら勝てるか」を考えさせた。リーダーとしての役割は、部下のアイデアを引き出し、その責任を自らが負うことだと悟った。
- 行動の模範: 彼は部下の立案した早朝訓練に、自らも毎朝4時から立ち会うなど、言葉だけでなく行動で範を示した。
- 結果: わずか1年半で弱小部隊を常勝部隊へと変貌させた。部下たちは、彼を「本気の連隊長」と評し、心からの尊敬を示した。
- 普遍的な教訓: 彼は「考える部隊は強い」という信念を持ち、「階級(地位)で指導するリーダーは失敗する」と説いた。また、退職後も後輩を敬う姿勢を崩さなかった。
■ 3. 結論
- 資質の違い: 部下を恐怖で支配し、最終的に組織の信頼を損なった「頭の良い」リーダーと、部下に考えさせ、責任を負い、行動で示すことで組織を強くした「本物の」リーダー。この対照的な二人の事例は、リーダーとしての資質が組織の命運を分けることを示している。
- 真の優秀さ: 真に優秀なリーダーとは、単に知識や知能が高いだけでなく、部下を信頼し、自律的に考えさせ、成長させる能力を持つ人物である。