■ 1. 個別特性に応じた指導法
- 特性の見極め: 子供の特性を面接でしっかり把握し、お調子者なら調子づかせ、プライドが高い子には数学のロジックを説明して理屈が分かっていることを認識させる
- 失敗を責めない: できないことを怒らず、失敗してきた子たちには「立ち止まっていてもいい」と伝え、できることを増やしていく
- 詳細な面接: 証明問題で何を証明しなきゃいけないか考え方のどこで詰まっているのかを把握する
- 国語力の弱さ: 大体の子は国語が弱く、問題を読み解く能力が難しい
■ 2. 国語力向上のための実践的アプローチ
- 日常会話が国語の勉強: 相手と話している時に「こう言ったら相手はこう思うかな」と考えることが、文章にした問題としての国語の問題である
- 感情の言語化訓練: 生徒に「テストします」と言った時の気持ちを4択で作らせることで、自分の感情に適切な語彙があるかをチェックできる
- 語彙力のチェック方法: 4択を出させることで、詳しく言えるのか、嬉しい・悲しい・むかついた・きしょいといった単純な表現しかできないのかが分かる
- 言語化能力の診断: 文章で自分の気持ちを表現できるかどうかで、この子は語彙力が高く言語化ができているのか、できていないのかが判断できる
■ 3. 入所時の生徒の語彙力の実態
- 中1レベルの語彙力: 入ってきたばかりの14-15歳ぐらいの子の語彙力は中1ぐらいである
- 感情表現の単純化: 「キモい」などの単純な表現しかできず、自分の感情を適切に表現できない
- 暴力への依存: 言葉が分からないから「えーい」と殴ってしまう
- ストレスの原因: 使える言葉が少ないため、適切に感情を表現できずストレスを抱えている
■ 4. 感情の構造化と表現力の育成
- 感情の詳細化: 「キモい」ではなく「怒っている。誰々にこういうことを言われたから」まで言えるようにする
- 理由の明確化: なぜ怒っているのか→金先生にこういうこと言われたから→こういうこと言われたら怒るのはなぜか→自分はそうじゃないと思ったから、という構造を理解させる
- 喧嘩の回避: 適切に感情と理由を言語化できれば喧嘩しなくて済む
- 読書の推奨: 使える言葉を増やすために読書を勧め、おすすめの本を渡したり感動する小説を紹介する
■ 5. 漫画を活用した読解力向上
- ワンピースの活用: 週刊ジャンプが施設に入るため、ワンピースを読んだ生徒に「なぜこのキャラクターは怒ったと思う?」と質問する
- キャラクター理解: ワンピースはキャラクターの心情が揺れ動く理由が分かりやすく描かれている
- 自分の立場で考える: 「自分がドフラミンゴの立場ならどう思う?」とロールプレイを通じて考えさせる
- 走れメロスの活用: 「メロスは激怒した」でなぜメロスが激怒したのかを考えさせ、王様がひどい人だから怒っていたという理由を理解させる
- 文章構造の理解: 王様がひどい人だと分かれば、これから出てくる文章は王様がどれぐらいひどい人なのかを説明するものだと予測できる
■ 6. 言語化能力がもたらす社会的効果
- 社会生活での効果: 会社や社会に出た時に、嫌な思いをした・こうしてほしい・助けてほしいという時により正確かつ相手に伝えられるようになる
- ストレス軽減: ストレスなく生きられ、暴力に頼らなくても生きていける
- 人間のストレスの原因: 多くの人間のストレスの原因は「相手に伝わらない」「なんで俺だけ」「あいつむかつく」である
- 言語化の重要性: 現場作業でも、複数の指示を受けた時にパニックにならず、状況を説明し優先順位を確認できるようになる
■ 7. 具体的な訓練方法
- 日記添削: 日記を通じて言語化の訓練を行う
- 状況説明の訓練: Aさんから仕事を頼まれているのにBさんから別の仕事を任された時、どう対応するかを考えさせる
- 相手の立場の理解: Bさんは自分がAさんの仕事をしていることに気づいていないかもしれないと考える
- 感情の分析: 「金先生にこらって怒られた」→「金先生のことが憎い」ではなく、「なぜ金先生は怒ったのか」→「自分が悪い」→「でも怒っているのはこれをしたからであって、僕のことが嫌いになったわけじゃない」まで言語化できるようにする
■ 8. 想像力と選択肢を増やす教育
- 想像力を働かせる: 結論を出す前に、行動する前に周りをよく見て、もしかしたらこうなっているかもしれない、こうかもしれないと考える
- 選択肢の増加: 想像の中で1番自分が生きやすい選択肢を増やすために語彙力をつける
- 訓練の成果: 言語化がうまいわけではなく、少年院で訓練したら勝手にこうなった
- 普遍的な能力: 誰でもできることであり、訓練次第で身につけられる能力である