貴族とはスペインの哲学者、オルテガ・イ・ガセットの言うところの「自分に課す要求と義務が多い人」のことだ。
身分や権力、能力や財貨などとは関係がない。
私が企業で出会った人々の中には、上の意味で真に「貴族的」な人々が存在しており、彼らが組織の屋台骨を支えていた。
例えば、半導体商社の営業の一人は、一介の課長であるにも関わらず、特に給料が高いわけでもないのに「私が会社を支えている」との強い自負があった。
だから彼は、組織に対してとても献身的だった。
と言っても、彼は決して傲慢ではなく、新人に根気強く仕事を教え、売上が足りなくなれば先陣をきって注文を取りに行く。
「親分肌」と言う感じが適切だろうか。
誰もが平等なこの時代、
「私は人より多くの義務を果たすのが当然だ」
「私がやらなければ誰もやらないだろうから、引き受けよう」
という貴族的な精神は、傲慢とも取れる。
しかし同時に、共同体になくてはならない精神の一つでもある。