■ 1. マッキンゼー入社当時の苦悩
- 新卒でマッキンゼーに入社し、優秀な同期、厳しい先輩、クライアントとの本気の議論という環境に置かれた
- 結果を出さなければと気合いが入っていたが、当時を振り返ると空回りをしていた
- 過去のプロジェクトの資料やお客様のホームページを読んでも頭に入ってこなかった
- 読んでみても次に何をやればいいか分からず、どんどん時間だけが過ぎてしまった
- 時間をかけて取り組んだにもかかわらず、その内容が頭に入らず、もう一度資料を読もうとしても何度読んでも頭の中には入ってこない悪循環に陥った
■ 2. 3つの誤解
- 誤解1(思考力の差だと思っていた):
- 同じプロジェクトで働く先輩やクライアントの言っていることが分からないのは思考力の差ではなく、知っているか知らないのかだけの話である
- 目の前で起きていることを理解するための知識や枠組みが頭に入っていないからである
- 他の人が分かっているのは以前からそのテーマに取り組んできたことがあるからであり、知識や経験の差である
- はじめてのテーマだから分からないのは当然である
- 本当に分かっている人は少なく、分かったつもりになっている人もいる
- 誤解2(すぐに分かると思っていた):
- プロジェクトに入ってすぐに状況がつかめていない自分はダメだと思っていたが、それも誤解だった
- 何ごともすぐに理解できると過信していたのかもしれないが、分かるには時間がかかる
- 自分が理解できたときには分からなかったときの自分のことを忘れてしまう
- 上司や先輩も最初は分からなかったのに、他の人にも自分と同じ理解を求めてくる
- 誤解3(資料を読んでいれば理解できると思っていた):
- テーマに関する資料は大量に存在するが、1時間、2時間、半日、1日と資料を読んでも全然頭に入ってこなかった
- なぜなら自分の頭で理解していないからである
■ 3. 分かるという状態の定義
- 分かるとは今何が起きているのか、なぜそうなっているのかを理解するだけでなく、このままだとどうなるか未来を想像した上で今をとらえることである
- 分かるとは何をするかを決めるために自分だけの地図をつくるような感覚である
- 最初は部分的な地図しかできないが、徐々に地図全体が完成していく
- 自分だけの地図をつくるからこそ本質に近づくことができる
- フレームワークを使ってしまうとすぐに全体が分かる感じが持てるが、それは錯覚である
- 現実はそんなシンプルに整理できるものではなく、自分なりに要素を1つひとつ抽出して関係性を可視化するからこそつながりが徐々に見えてくる
- 地図ができれば次の一歩を迷いなく進むことができる
■ 4. 時間をかけることの重要性
- 分からないときには分かったあとの自分は想像できない
- 何度か繰り返しているうち、時間をかけて分からない自分から分かる自分に変化できるので焦らずやっていこうと思えるようになった
- 自分を信じられるようになるには時間がかかったが、結局コツコツとやればいい
■ 5. 情報認識のプロセス
- 分かるための最初のステップが情報認識である
- 情報認識では大量の情報からテーマに合った要素を抽出し、具体的な言葉で記述する
- いきなり情報は集めず、目の前にある情報を自分の頭で認識するという意味で情報認識と名づけている
- 情報認識のプロセスはこれから考えていくための下準備であり、料理でも素材を準備してから調理するように考えるための素材をテーブルに準備していく
- これは自分の思考を進めるための作業であり、人に見せるためのものではない
■ 6. 書き出すことの効果
- テーマに関する資料を読んで重要と思われる要素を書き出してみる
- 書き出すことで大量の情報そのままよりも分かってくる(要素が減るからである)
- 世の中に存在する情報のすべては頭の中に入り切らない
- 要素をたくさん書き出したらグルーピングをし、さらにグループごとに名前をつける
- まとめることで理解が進む
■ 7. 最初のアウトプットの姿勢
- 書き出すことは粗くて構わず、どんどん書いていく
- 最初のアウトプットはしょぼくていいのであり、最初から立派なパワーポイントの資料なんてつくることはできない
- 資料をつくることは誰かのためだが、この作業は自分のためのメモである
- 思考力がある人はいつも落書きをしているように思える
- どんな立派な資料も最初は粗い情報認識からはじまっている
- すぐに分かる人なんていないし、最初から分かっている人がいたらそれは知っている人である
■ 8. ペンを使うことの利点
- 自分の認識を一番素直に表現できるのはペンである
- スマホやパソコンで自分の思いを書き出すこともできるが、ペンの感覚を超えるものはない
- 今もペンが使われ続けている理由は思考の伝達率が高いからである
- お気に入りのペンとノートを買って書きたくなる環境を用意している
■ 9. 認識を書き出す際の注意点
- 認識とは自分がどう思っているかである
- 最初の段階ではどんどん書いてほしく、正確性にこだわることなくとにかく気になる要素を書き出す
- 何が起きていると思っているのか、それはなぜだと思うか、何が必要だと思うかを書く
- それが本当に正しいかはまた別に調べるとして、自分の認識も含めて書いてみる
■ 10. よいところと悪いところをフラットに書き出す
- 起きていることを書き出すというと悪いことばかり書く人がいる
- 今取り組んでいるのは見えている問題の解決ではなく、見えていない問題の発見である
- 悪いところばかりを探すクセが染みついていないか確認する必要がある
- 悪いことばかり書いていると、その後の思考も悪いところを直していくというものに限定されてしまう
- よいところをもっと伸ばすのを忘れずに、よいことも悪いことも書き出してみる