■ 1. 書籍の概要
- 1枚ワークス株式会社代表取締役、1枚アカデミアプリンシパル、コミュニティラボ主宅の浅田すぐるさんの「トヨタで学んだ紙1枚で考え抜く技術」
- 世界一の自動車メーカーであるトヨタには改善、見える化、なぜ5回繰り返す、紙1枚など様々な企業文化があるが、すべては考え抜くためにあった
- 著者がトヨタで学んだ最大にして最強のスキル「考え抜く」をテーマに、そもそも考え抜くとはどういう状態なのか、なぜ考え抜くことが重要なのか、どうすれば考え抜くことができるのかなどを理論と実践から解説している
■ 2. ポイント1:問題解決の本質
- トヨタビジネスプラクティス(TBP)は8つのステップで構成されている:
- ステップ1:問題を明確に定義する
- ステップ2:問題を分析し分解する
- ステップ3:改善の目標を設定する
- ステップ4:真因を分析する
- ステップ5:対策を立てる
- ステップ6:対策を実行し最後まで見届ける
- ステップ7:結果とプロセスの両方をよく見る
- ステップ8:うまくいったプロセスを標準化する
- 要するにTBPは問題解決のプロセスである
- すなわちトヨタにおける仕事とは問題解決のことである
- 問題解決力はずっと磨き続けるべきビジネススキルのセンターピンである
■ 3. TBPとPDCAの関係
- TBPのステップ1から5はPDCAサイクルのPにあたる
- ステップ6(対策を実行し最後まで見届ける)はD(ドゥ)
- ステップ7(結果とプロセスの両方をよく見る)はC(チェック)
- ステップ8(うまくいったプロセスを標準化する)はA(アクション)になる
■ 4. 各ステップの詳細
- ステップ1(問題を明確に定義する):
- TBPでは問題を「あるべき姿と現状のギャップ」と定義する
- あるべき姿が思い浮かばない場合は2つ上の役職(課長や部長)の立場で考えてみると答えが得られる
- ステップ2(問題を分析し分解する):
- 定義した問題を具体化していく
- 人軸、時間軸、空間軸の3つの軸で分解してみる
- ステップ3(改善の目標を設定する):
- 何をもって解決とするかを決める
- ステップ2で問題の具体化ができていれば改善目標はおのずと定まる
- ステップ4(真因を分析する):
- 問題の原因を考える
- この段階での思考が浅いとその後のステップが的外れなものになってしまうため注意が必要
- トヨタの有名な「なぜなぜ分析」が使える:何が問題点かを5回繰り返して問題の根本的な原因を突き止める
- ステップ5(対策を立てる):
- 対策案をできるだけたくさんあげた後絞り込んでいく
- 判断基準は3つ:貢献度(実施した時のインパクトが大きな対策はどれか)、難易度(比較的簡単に導入できそうな対策はどれか)、鮮度(今すぐ導入しないと効果が薄まる対策はどれか)
■ 5. 問題解決=広げると絞るの繰り返し
- ステップ1から5をまとめると:様々な問題を検討し問題点を絞り込む、様々な原因を検討し根本原因を絞り込む、様々な対策案を検討し実施する対策を絞り込む
- つまり問題解決の本質は「広げると絞るの繰り返し」である
- 問題も原因も対策も多様な可能性や選択肢を漏れなくダブりなく上げるところからスタートする(これが「広げる」プロセス)
- その後広げた中から一つを選ぶ(この思考プロセスが「絞る」)
- 仕事とは広げると絞るを繰り返しながら問題を解決することである
■ 6. ポイント2:紙1枚で見える化する
- 課題は最終的なまとめをA3サイズの紙1枚に仕上げること
- ステップ6(実行)以外の7項目(1問題の明確化、2現状把握、3目標の設定、4分析、5対策立案、6実施結果、7今後に向けて)を1枚のビジネス文書にしていく
- トヨタの文書は紙1枚が基本である
- その狙いは視覚化にある:口頭ではなく見せて伝えるコミュニケーションスタイルがトヨタの文化だった
- トヨタを象徴する言葉の一つとして「改善」と並んで「見える化」がある
- トヨタパーソンにとっての見える化とは紙1枚資料によってコミュニケーションを視覚化することだった
■ 7. 著者の経験から学ぶこと
- 著者が配属された東京本社ではどの打ち合わせに参加しても議論の内容がさっぱり理解できなかった
- 上司から議事録作成を命じられたが困惑するばかりだった
- 上司の助言で打ち合わせ資料を読み込み過去の会議資料や議事録を参考にした
- 打ち合わせ資料や議事録を見てみるとその大半はやはり紙1枚にまとまっていた
- いずれも内容は理解できなかったが、それでも毎回登場する言葉や繰り返し出てくる言い回しなどがあることがわかった
- こうした地道な作業を積み重ねて何とか議事録を完成させることができた
- このエピソードから学んでほしいのは「考え抜けない理由」である
- 考え抜くことができないのは考える材料が頭にないからである
- 当時の著者には業務知識が不足していた
- 料理で例えるとカレーの作り方を知らないからつまずいているのではなく、カレーの材料が不足しているから作れない状態だった
■ 8. 紙1枚の本質
- トヨタの紙1枚文化は考えの浅い者の成長においてどのような機能を果たしているのか
- 例えば手元に3枚の資料があった内容を紙1枚にまとめ直して上司から指示されたとする
- 多くのトヨタパーソンは「要するに」「結局のところ何が言いたいのか」といったツッコミを資料や自身に入れ続け削れるところを削りまとめられるものは集約する
- その繰り返しによって紙1枚が仕上がっていく
- 紙1枚はこれに埋めればOKといったテンプレート志向のツールではない
- 制約を課すことで頭を困らせ脳に汗をかかせるツールである
- 考え抜くことこそその本質である
■ 9. ポイント3:考え抜くための紙1枚フレームワーク
- 著者は数多くの紙1枚を見てきたが、全部見るとすべてはWhat、Why、Howの3つでできている
- 会議の議事録であれば:なぜ集まったのか(Why)、何をし何が決まったのか(What)、どうする(How)
- 企画書は:なぜこの企画をやりたい(Why)、企画の概要内容は(What)、どうやって実現していく(How)
- 資料の種類や目的が変わってもWhat、Why、Howの3つの疑問を解消していく点では同じ
- TBPのステップ1から5もWhat、Why、Howの3つに分類できる:
- ステップ1(問題を明確に定義する)と2(問題を分析し分解する)と3(改善の目標を設定する)はWhat
- ステップ4(真因を分析する)はWhy
- ステップ5(対策を立てる)はHow
- つまり仕事=問題解決とはWhat、Why、Howという3つの疑問を解消するべく広げると絞るを繰り返すことであると定義できる
■ 10. トヨタの紙1枚文化を再現する1枚フレームワークの手順
- 紙1枚を使ってステップ1の問題の明確化(あるべき姿と現状のギャップを明確にする作業)に挑戦する
- まず手元に紙と緑、青、赤3色のカラーペンを用意し緑ペンで縦線と横線を3本ずつ引いて4×4のフレームを作る
- 左上の第1フレームに「あるべき姿は」、2つ下の3行目のフレームに「現状は」、さらに右上のフレームに「問題は」と書く
- 次に青ペンを持ち業務のあるべき姿と現状の項目を埋める
- 色を変える理由は枠組みの構築=緑、材料出し=青とすることで脳内でやっていることを視覚的に区別するため
- 最後にあるべき姿と現状を見比べギャップとして浮かび上がるものを「問題は」の下の欄に記入していく
- この作業はまとめや絞り込みの役割を担う思考となるため赤ペンを使う
- シンプルで簡単な動作だからこそ行動に移せる、何度も試せる、繰り返して習慣ができるという点で価値がある
■ 11. 究極の紙1枚
- 考え抜く力を高めるという目的を限定すればこの紙1枚だけ書けばOKと言っても過言ではない
- 緑ペンでフレーム数8×4=32の枠を書き一番上の行に左から日付と考え抜きたい題材、What、Why、Howを記入
- 青ペンに持ち替えたらまずはWhatの欄に向き合う
- たくさん書いて問題の可能性を広げたら重要度の高いものに絞る
- 絞ったものは赤ペンを使って囲う
- 次にWhyの欄を埋める:青ペンでできるだけ多くの原因を上げ赤ペンで矢印を書き込んで因果関係を突き止める
- 最後にHow:青ペンで埋めた後は貢献度と難易度と鮮度の軸で絞ってそれぞれ赤ペンの丸、三角、四角で囲っていく
- これで取り組む対策を策定できる
■ 12. まとめ
- トヨタにおける仕事とは問題解決のことである
- 紙1枚は制約を課すことで頭を困らせ脳に汗をかかせるツールである
- 考え抜くことこそその本質である