■ 1. 官僚の仕事の基本姿勢
- 「やっていることも、やっていないことも全て理由を説明できなければならない」ことが求められる
- 部署を異動する度にまず担当する分野の過去の国会答弁や想定問答集を読み込む
- その部署に関してよく質問されることや論点を把握する
- どう説明するか/何を言っていいのか/どんなことを言ってはいけないのかなど判断基準を持つことからスタート
- 2年に一度くらい異動があり専門性は変わるが仕事のフォーマットは同じなので困らない
■ 2. 仕事のフォーマット「現状・課題・解決策」
- 役人の仕事で最も使う言葉は「整理して」
- 「整理」の内容:
- データやエビデンスを積み上げて現状どうなっているかという事実関係を把握する
- どのような課題があって解決策はどのようなものがあるのかを徹底して整理する
- 課題には制度変更が必要な大きなものと手順の変更といったテクニカルな対応で解決できるものがある
- 課題とされているがそもそも本当に解決すべきことなのかを検討しなおす場合もある
- 解決できるかどうか/対応コストはどうか/ベネフィットは何かを総合的に考える
- 現状を詳細に知るためにはn=1の個人の感想ではなく調査が必要
- 調査結果から用意した解決策を関係者や有識者に見てもらい意見を聞きつつ方針を調整していく
■ 3. 「均等に叩かれるくらい」という落とし所
- どのテーマでも「自分なりの正しさ」を持っている人がたくさんいるので全方位的に満足してもらうのは難しい
- 誰かが極端に得をしたり極端に損をしていない状態を落とし所にする
- 「その落とし所にしたのはなぜか」を説明可能にすることが役人としてやるべき現実的な仕事
- 物事はだいたいトレードオフなのである人の正義を通すと別の人が傷つく
- 「誰からも叩かれない」を目指すと本当にどこにも行き着かない
- ある程度は叩かれることも仕事のうちだと割り切る
- 「分かり合えない前提で落とし所をどうするか」で進めていく
■ 4. 調整しやすい相手と難しい相手
- 自分の利益になることをして欲しいという人の方が話し合える:
- 「補助金がほしい」「うちを特別扱いしてくれ」と言われた場合もその理由に妥当性があり広く国民の利益につながるのであれば法律やルールの中でやれることかどうかで判断できる
- 難しい相手:
- あまりに極端な意見を持って「自分のことはどうでもいいが、この国のためにはこれが絶対的に正しい」と考えている方
- 意見が対立している相手に対して過度に排他的な人たち
- メリット・デメリットの比較だけでは調整つけられない
■ 5. 根回しの重要性
- ステークホルダーがみんないる「平場」の会議で根回しなく資料を見せると収集つかなくなる
- 初めて見る資料を見せてしまうと業界の代表として言うべき意見を言ってもらうのが難しくなる
- 思いつきみたいなコメントをされてしまい非生産的な時間になる可能性が高くなる
- 事前の根回しで説明することで反対意見が出ても「仰る通りですね。その問題にどう対応するか資料に加えます」と返しつつ資料に入れ込んでいくことができる
- 落とし所と説明の仕方を調整していく
- 一般的には根回しばかりしているのは遅いイメージがあるが実はそれが最短
■ 6. ワーディング(言葉選び)の重要性
- 相手と話すときにどんな言葉を選ぶかが役人としての重要スキル
- 「ウチの仕事じゃないんで」「それはやりません」という言い方は説明が下手ということ
- 軸を少し変えて説明する技術が必要
- 相手に「間違っている」「違います」と言うことは基本的にない
- 「ここまでは分かります。ただ、こういう立場の人もいて……」という話を積み重ねていく
- 怒鳴られても「目指す理想像は同じですよね。進め方の考え方やアプローチが違うだけでゴールは一緒です」と言うことで説明を聞いてもらえるようになる
■ 7. キャリアを通じた経験の積み方
- 若手のころから「役人の仕事のやり方」を叩き込まれて教えられて学んでいく
- 若手のうちは議員秘書や陳情団体の方に説明する機会をもらって経験を積む
- 係長になると野党の先生に説明することもある
- 補佐や室長になると与党の先生に説明することもある
- 課長や局長になると大臣や与党幹部に直接説明するようになる
- 段階を踏んで経験を積んでいく
■ 8. まとめ:「みんなの納得を目指さない」調整技術
- まずは「整理」:
- 現状・課題・解決策で議論の土台を揃える
- データやエビデンスを積み上げて「なにが論点でなにが論点じゃないのか」を切り分ける
- いきなり「平場」に出さない:
- 事前にすり合わせて論点を出し切る
- さまざまな意見を拾って資料に反映し落とし所までの道筋をつくってから全体会議に持ち込む
- その積み重ねが結果として「まあまあ均等に叩かれるくらい」のバランスになる
- 最後は「説明」:
- やる/やらないのどちらの理由も説明できる状態にする
- 「なぜそうするのか」を相手に合わせた言葉で丁寧に伝えることが調整を前に進める技術になる