■ 1. 文書の位置づけと管理
- 本マニュアルは戦略情報局(OSS)が関係者の参考・指導のために発行した臨時文書
- 内容は厳重に管理し、権限のない者への流出を禁じる
- 配布は慎重を期し、ラジオ放送への利用は局地的・特殊な案件に限定
- 機密文書取扱規則(AR 380-5)を遵守する
■ 2. 序論: 簡易破壊工作の定義と特性
- 目的:
- 簡易破壊工作の特性を明らかにし、促進・遂行のための提案を示す
- 形態の分類:
- 高度技術的な奇襲作戦(訓練を受けた工作員を要する)
- 一般市民が実行できる簡単な行動(本マニュアルが主に対象とする)
- 簡易破壊工作の要件:
- 特別な道具・装備を必要としない
- 単独または複数の一般市民によって実行される
- 組織化された集団との関わりを必要としない
- 負傷・発覚・報復の危険を最小限に抑える形で行われる
- 武器と標的:
- 武器: 塩、釘、ロウソク、小石、糸など日用品
- 標的: 日常生活において目立たずアクセスできるもの
- 第二の形態(非物理的破壊):
- 誤った判断、非協力的な態度、他者への誘導を通じた間接的妨害
- 「人的要素」として、事故・遅延・全般的な妨害を引き起こす
- 「誤りの許容範囲」を意図的に拡大することを目指す
■ 3. 予想される影響
- 直接的影響:
- タイヤの切り裂き、燃料の破損、機械の摩耗などで物資・人員・時間を浪費させる
- 大規模に発生すれば敵の戦争遂行能力への持続的な妨害となる
- 二次的効果:
- 敵の行政官・警察を悩ませ、士気を低下させる
- 成功体験が市民破壊工作員を大胆にし、より大規模な活動へ発展させる
- 個人を連合国の戦争努力に積極的に同一化させ、侵攻時の公然支援を促す
■ 4. 破壊工作員の動機付け
- 動機付けの課題:
- 市民が自らの意思で長期間継続させることが特別な課題となる
- 意図的な愚かさは人間の本性に反するため、圧力・刺激・保証が必要
- 個人的動機の形成:
- 間接的な個人的利益(委員長の追放、不快な法令の廃止、食料の入手など)を具体的に伝える
- 抽象的な自由の概念より具体的な利益の方が説得力を持つ
- 他地域の成功事例を伝えることで大規模グループの一員であると感じさせる
- ラジオ放送・自由放送局・反体制新聞を通じた称賛声明の活用
- 責任感の醸成:
- 破壊工作員自身が他者を教え、輪を広げる状況を作ることが最も重要
- 思考の転換:
- 工具を研ぐのではなく鈍らせる、勤勉から怠惰へなど逆転した思考を促す
- タイプ別アプローチ:
- 非技術者: 破壊対象と道具についての詳細で具体的な提案が必要
- 技術者(旋盤工・整備士など): 破壊に向けた思考再構築の刺激が必要
- 普及メディア:
- 自由放送局、偽ラジオ放送、リーフレットを活用して情報を広める
- 安全対策:
- 無害に見えるものを使用し、多くの者が責任を負い得る行為を選ぶ
- もっともらしい言い訳(寝不足、不注意など)を用意する
- 破壊後に周辺を うろつかない
- 直接非難される行為は頻繁に行わない
■ 5. 道具、標的、タイミング
- 標的の優先順位:
- 平時: 敵が使用中または近く使用予定の資材・設備に限定
- 軍事攻撃前: 工業生産(製造工場など)を重点的に狙う
- 軍事攻撃中: 効果が直接的・即時的なものを優先(交通・通信・重要物資)
- 制約:
- 市民破壊工作員を厳密にコントロールすることはできない
- 特定の標的に正確に集中することは非合理的
- 軍事状況に応じたコントロールは敵に情報を与えるリスクがある
■ 6. 具体的な破壊工作手法
- 建物:
- 放火: ロウソクと紙の遅延着火装置の使用、廃棄物の蓄積、ガス爆発の利用
- 水害: スプリンクラーの強制作動、下水管の詰まり(スポンジの膨張利用)
- 電力妨害: ヒューズの無効化によるショート・火災・広域停電の引き起こし
- 施錠妨害: 鍵穴への異物詰め込み
- 工業生産(製造業):
- 工具破壊: 切削工具の鈍化、ノコギリのねじり、ビット・ドリルの過圧折損
- 潤滑システム: 金属粉・砂・ガラス粉の直接投入、フィルター破壊、潤滑油の希釈
- 冷却システム: 穀物・おがくず・髪の毛による詰まり、急冷によるひび割れ
- 燃料系統: おがくず・砂糖・粉砕ガラスの燃料タンク投入、燃料の希釈
- 電気モーター: レオスタットの過熱設定、ほこり・湿気の付着、整流子の損傷
- 変圧器: オイルへの水・塩水投入、換気妨害、電気部品への導電粉の散布
- 生産(鉄鋼・鉱業・農業):
- 高炉: 耐火レンガへのタール過剰混入による早期摩耗
- 鋳造: 鋳型中子への気泡混入による不良品製造
- 鉱業: エアーピック故障(水・石炭粉)、搬送チェーンの弱体化、石炭への岩石混入
- 農業: 収穫時期の意図的なずらし、貯蔵品の水浸し(食料余剰地域・徴発地域に限定)
- 輸送(鉄道):
- 旅客: 切符の誤発行、乗客の不快化、荷物の誤配、列車の速度低下
- 分岐・信号: 配線の入れ替え、信号機の無効化、ポイントへの異物詰め込み、塩による短絡
- 路盤・線路: 締結板のボルト除去、レールの拡幅
- 機関車: ボイラーへの重油・石鹸投入、高速運行でのブレーキ多用
- 輸送(自動車):
- 道路: 標識の変更・撤去、誤情報の提供、路面破損の拡大、釘・ガラスの散布
- 車両: 燃料・潤滑油への異物投入、バッテリーの破壊、タイヤの切り裂き・低圧充填
- 輸送(水運):
- 航行妨害: 誤った噂の流布、過度な慎重運航、座礁、コンパスの狂わせ
- 貨物: 積み付け順序の逆転(重いものを上に)による損傷
- 通信:
- 電話: 遅延・誤接続・意図的切断、虚偽通報によるシステム過負荷
- 電報: 内容の意図的な混乱(単語の一字変更)、配達遅延
- 映画: 焦点ずらし、フィルム切断、蛾の放棄による上映妨害
- ラジオ: 過変調による音質悪化、ショートによる受信障害
- 電力:
- 送電線: 絶縁体の汚損、塩を染み込ませた糸による短絡
■ 7. 組織・生産に対する一般的妨害(人的要素)
- 組織・会議:
- すべてを正式な手続きを通すよう主張し近道を許さない
- 長時間の演説・逸話で議論を引き延ばす
- 案件を大規模な委員会(5人以上)に付託する
- 些末な問題の頻繁な提起、文書表現の細部への議論
- 過去の決定に戻り再議論を促す
- 「慎重さ」「理性」を盾に拙速な決定を阻止する
- 決定の管轄や上位方針との矛盾を問いただす
- 管理者・監督者:
- 書面による指示の要求、指示の「誤解」、際限ない質問
- 実行を完全準備まで遅延させる
- 不要な書類作業・重複ファイルの作成
- 重要な仕事を非効率な労働者や設備に割り当てる
- 比較的重要でない製品に対する過剰な品質要求
- すべての規則を一字一句厳密に適用する
- 事務職員:
- 数量の誤記、誤住所の使用、書類の誤分類
- 書簡のやり取りの長期化、郵便の意図的な遅延
- 不安を煽る噂の流布
- 従業員:
- 意図的な低速作業、不要な中断の多発
- 外国語指示の理解不能を装う
- 仕事の粗雑化を道具・機械のせいにする
- 良品・不良品・廃棄部品の混在
- 書類を読みにくい字で書き直しを発生させる
- 労働問題への集団的申し立てによる経営側の手続き負担増大
■ 8. 士気低下・混乱のための一般的手段
- 質問への冗長・難解な説明の実施
- ゲシュタポへの架空スパイの報告
- 愚鈍・怒りっぽさの演技
- 配給・交通規則などへの故意の誤解
- 代用品への公然たる不満の表明
- 枢軸国民・協力者への冷淡な態度(会話の中断、無視)
- 政府職員の前でのヒステリックな行動
- 売国奴政権に関連する映画・娯楽・新聞のボイコット
- 回収計画への非協力