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東芝が脳の機能までハード化、ネズミの海馬モデルで動作再現

東芝らの開発品の狙いは深層学習ではない。同社が着目したのは人や動物の脳が持つ別の機能である。海馬と呼ばれる部位が担当する、空間の中で自分の位置を認識する能力だ。現在の自動運転車やロボットでは、いわゆるSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術で実現している部分である。SLAMの代わりに、海馬の動作を忠実に再現するハードウエアを使うことで、何桁も低い消費電力で同様な動作を実行可能になるとみる。

東芝の取り組みのユニークな点は、脳の機能自体の模倣を目指すことである。実物の神経細胞(ニューロン)に似た挙動をする半導体、いわゆるニューロモルフィック(neuromorphic)チップを使うことに加え、ニューロン間の接続や信号の制御なども脳のモデルに倣った。これまでにもニューロモルフィックチップの開発や応用の研究は多いが、主な狙いはニューロンの動作を真似ることで消費電力を大幅に削減するといった点だった。有名な例として米IBMが開発したニューロモルフィックチップ「TrueNorth」が知られているが、現実の脳とは異なる動作原理に基づくディープニューラルネットワーク(DNN)注1)を、数百mWと超低電力で実行できることをうたっている。

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