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驚異の原子力電池、次世代蓄電池の本命となるか

原子力電池は、放射線電池、アイソトープ電池、ラジオアイソトープ電池とも呼ばれる。原理は、放射性物質が崩壊した時に得られる熱などを熱電変換素子などによって電気に変えるもの。放射性物質はα崩壊、β崩壊、γ崩壊により、それぞれ熱、電子、電磁波などを放出するが、このうち熱を出すα崩壊を利用する。α崩壊は高いエネルギーを持つものの、物質への透過力が低いことから薄い構造体で遮蔽できる。

加えて、放射性物質は放射性同位体である必要があり、また、長い半減期であることが望ましい。具体的には、これまでプルトニウム238、ポロニウム210、ストロンチウム90といった放射性同位体が使われてきた。うち、プルトニウム238は半減期が87.7年と長いことから宇宙探査機などで初期から採用されてきた。

一方、近年で特に注目を集めるのが主にβ崩壊を利用したタイプで、ダイヤモンド電池やベータボルタ電池と呼ばれる。先述のようにβ崩壊で電子を放出するが、これを半導体などを利用することで電気を集める仕組みだ。放射性物質としては、ニッケル63や炭素14といった放射性同位体が検討されている。炭素14は半減期が5730年であることから特に有望視されている。

一方で、短所は出力密度が低い点。従って、電動車などの高出力用途には向かず、もっぱらIoTデバイスやペースメーカーといった省電力デバイスが中心になる。