産業革命以後、熱から動力を生み出す「エンジン」や、その逆の過程である「冷凍機」などの熱機関は、我々の生活に欠かせない基盤技術となった。最近、理化学研究所の大野圭司専任研究員、フランコ・ノリ主任研究員らの国際共同研究グループが、こうした熱機関に量子技術を導入した「量子熱機関」と呼ぶ新現象を模擬的に再現することに成功した。“量子時代”の新しい産業革命の幕開けを予感させる成果だ。(藤木信穂)
実験では、一定の磁場の下で、約9ギガヘルツ(ギガは10億)の磁気共鳴周波数を持つスピン状態を用意。エンジンと冷凍機の二つの熱サイクルを想定し、電圧を方形波状に変調することで、スピンの2準位エネルギー差が大きい、または小さい状態が周期的に代わる状況を作り出した。
すると、ゆっくりとした方形波変調の下で再現される、従来の熱サイクルを模した状況では、量子ビットの測定は“古典的”な結果を示した。
一方、速やかな方形波変調の下では複雑な干渉パターンを示した。これは、二つの熱サイクルの干渉効果、つまり「量子重ね合わせ」が現れたためだと解釈できる。
今回の実験は高温部分と低温部分を省いており、厳密な量子熱機関とはいえない。だが今後、これを含んだ量子熱サイクルを実現できれば、「エンジンと冷凍機の機能を高速で切り替えるといった、古典的な熱機関では実現できない技術の開発につながる」と大野専任研究員らは展望している。
なるほど、わからん。