金や銀、白金(プラチナ)など貴金属と呼ばれる8種類の元素を全て混ぜた合金の開発に世界で初めて成功したと、京都大などの研究チームが米国化学会誌に発表した。水から電気分解で水素を製造する触媒として、既存の白金と比べ10倍以上の性能があるといい、研究チームは「青銅器時代から約5000年間、誰も成功しなかった夢の合金ができた。エネルギー問題の解決にもつながる可能性がある」と期待する。
8元素は他にパラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム。いずれも希少で耐腐食性がある。水と油のように混ざらない組み合わせがあり、全て合わせるのは困難と考えられてきた。
京大理学研究科の北川宏教授(無機化学)らのチームは「非平衡化学的還元法」と呼ばれる手法で、8元素の金属イオンを均一に含む溶液を200度の還元剤に注ぎ、瞬間的に還元させてナノ(ナノは10億分の1)メートル規模の合金を作ることに成功した。高温・高圧の環境で大量生産する方法も見つけたという。
北川教授らのチームは2020年に金と銀、オスミウムを除いた白金族5元素の合金を開発している。白金族は触媒に多用されており、5元素の合金は水素発生の触媒に使われる白金の電極に比べ2倍の活性を示した。金と銀、オスミウムはそれぞれ単独では水素発生の触媒として機能しないが、これらも混ぜた8元素の合金は10倍以上の高活性を示した。企業と協力して量産化を進めるという。
コストもプラチナの10倍になりそう