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名大,AI応用溶液成長法で6インチSiC基板作製

現在のパワー半導体の主流はSiで作製されているが,Siの物性値に起因し,モーター駆動制御時に一定の割合で熱エネルギーが発生し,CO2排出量の増加の原因となる。

モーター駆動用パワー半導体をSiからSiCに置き換えることにより,この熱エネルギーの大幅な削減が可能となり,2030年で1億4000万トン,2050年で2億8000万トンのCO2排出削減効果が見込まれるという。

現在,昇華法で作製されたSiCパワー半導体用基板が社会実装されているが,基板が高価かつ結晶欠陥密度が高いという問題がある。結果としてSiCパワー半導体デバイスが高価かつ低信頼性となり,市場拡大に踏み切れていない。

そこで研究グループは,AI技術を応用したプロセスインフォマティクスを用いて,コンピューター内に実際の結晶成長を疑似的に実現する装置を構築した(デジタルツイン)。これを用いることで,数百万回レベルの試行をコンピューター内で短時間でできるようになり,遺伝的アルゴリズムなどの最適化手法を用いることで,条件を素早く求めることができるようになった。

結果として,3inchから6inchまでの口径拡大を昇華法の10年程度に対して約1年実現し,溶液成長法において世界で初めて6inchの結晶を実現した。さらに,8inch単結晶基板の開発に取り組んでおり,現在,7inch弱の結晶を実現している。