臨死体験の背後にある正確なメカニズムは不明のままだが、これまでの研究によると、呼吸と心拍が停止した後の2~20秒間、意識が保たれているという。自分が死んだ状態であることを自覚できるということになる。
呼吸や心拍が止まった後も、2秒から20秒は意識は残っていると、パーニア博士は言う。これは、酸素がなくても大脳皮質が持ちこたえられると考えられている時間だ。
大脳皮質は思考や意思決定を行う場所で、五感から集めた情報を読み解く役割も担っている。
脳に異常が無いのであれば、心停止しても血液に残った酸素によって脳死まで若干のタイムラグが生じるという仮説は確かに有り得そうな話だ。
脳死していないのであれば、感覚器からの入力を理解する猶予があるかもしれない。
気になるのは「それは苦痛を伴うのか?」であるが、脳への血流停止による脳の機能停止は柔道などの絞め技で失神する現象と共通するものがあるので、恐らく苦痛はないと考えられる。
単に意識が切れた後、速やかに脳死し生命活動の停止につながるのだろう。
であれば、老衰など穏やかな死の場合は苦痛が無いということであり、これはひとつの救いではないだろうか。