アメリカの核融合スタートアップHelion Energy(ヘリオン・エナジー、以下ヘリオン)は5月10日、2028年までに稼働開始を目指している同社初の核融合発電所で発電した電力をマイクロソフトに供給する契約を締結したと発表した。この契約は「世界初の核融合発電によるエネルギー購入契約」だという。
ただ、気になるのは「本当に実現できるのか」という点だ。現時点で核融合発電が実証可能であることを証明した企業が存在しないことなどを考えると、「2028年までに商業化を実現する」という目標は、いささか強引な感は否めない。
まず原料には、重水素とヘリウムの同位体である希少なヘリウム-3を使用。原料をそれぞれプラズマ化したあと、装置の両端に設置した二つの加速器で時速100万マイル(時速約160万キロメートル)にまで加速し、装置中央で衝突させることで核融合反応を「非連続的」に発生させる。
ヘリオン・エナジーのウェブページにある説明によると、核融合反応によって生じたエネルギーの影響でプラズマが膨張し、装置内の磁場が変化。この時、中学理科でも登場する「ファラデーの電磁誘導の法則」(磁石をコイルに近づけたり離したりする際に電流が生じる現象)によって電流(誘導電流)が発生する。この電流を取り出すことで、電力として利用しようというわけだ。
ヘリオン・エナジーによると、この方式は炉の小型化が可能で低コストで済む点がメリットだという。