血糖値を下げるホルモン・インスリンの分泌がうまくいかなかったり、インスリンの効きが悪くなったりすると、高血糖が常態化してさまざまな不具合や病気を引き起こす「糖尿病」の原因となります。そこで、糖尿病の進行によってはインスリンを注射する必要があるのですが、「インスリンを分泌できるように遺伝子改造した皮膚常在菌を体内に取り込むことで、自動的にインスリンを体内に供給する」という新たな治療法の研究を、生物学系ブログサイトであるGROWが紹介しています。
ギャロ氏は2013年に、皮膚に常在する細菌が表皮だけではなく、表皮より2mm深い体内でも生息しており、一部が欠陥と相互作用する可能性があるという研究結果を発表しました。つまり、この表皮の常在菌のDNAを改変し、「血糖値の上昇を感知するとインスリンを分泌する」ようにプログラムすれば、自動でインスリンが分泌されるシステムを体に導入できるというわけです。
ハイエク氏やギャロ氏らの研究チームは、皮膚の常在菌の1種である表皮ブドウ球菌のDNAを改変し、1本のアミノ酸鎖からなるインスリン類似体を発現する遺伝子を組み込みました。このインスリン類似体は、体内で生成されるインスリンと同様に機能しますが、表皮ブドウ球菌の生息に適した温度でも安定しているのが特徴です。