注意を持続させることが困難だったり、順序立てて行動することが困難だったりといった特徴が現れる「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」は、精神医学的に障害の一種とされています。しかし、ペニンシュラ大学の神経科学者であるデビッド・バラック氏らの研究チームが、狩猟によって食料を得るような環境に置かれた際には、ADHD患者がそうではない人々よりも優れたパフォーマンスを発揮する可能性を提示しています。
バラック氏は「人間や他の類人猿は非常に賢い採餌者ですが、多くの動物と同様に、同じ畑や狩り場にとどまって乱獲してしまう傾向があります。そのため、早めに移動するなどの行動を取ることは、乱獲を減らすことができる点で有益だと言えます。衝動的な行動を取るなどのADHDの症状はその点で優れている可能性があります」と述べています。
またバラック氏は「今回の研究結果は、初期の狩猟採集民のコミュニティが直面していた、食料やその他の資源が不足してしまうという問題によってADHDという特徴が生まれた可能性を示唆しています」と語りました。
科学技術が発展した現代では、狩猟採集を行うことは一部の民族を除いてほとんどなくなりました。しかし、今回実験で使われたような意志決プロセスが発生する状況はいまだに存在しています。バラック氏は試験勉強を例に挙げ「試験勉強をしている人は1つのリソースから知識を得ようとしますが、そのリソースがトピックの理解に役立たない場合もあります。そこでADHD傾向がある人はすぐに別のリソースに切り替えることができ、より効率的な勉強ができるかもしれません」と報告しました。