「多分、10年ほどの間に量子力学学習の教科書が大きく変わってくると考えている。また変わらなければならないと考えるものである。」
「その一方、そのためにはこれまでの物理学者の意識の巨大な抵抗を乗り越えねばならず、多分世代交代の中でしか進まないであろう。」
「『情報の理論』とは、量子力学の数理理論に登場する状態ベクトルや波動関数といった数学的量は実在の表現ではなく、実在についての『情報の理論』であることが鮮明になったという意味である。」
「すなわち、老舗の物理学本舗から暖簾分けしてもらって量子情報は始まった、と。ところが、新量子がコモディティ化した遠い未来では、量子情報が物理学本舗の椅子に座り、素粒子理論や超弦理論は量子情報本舗の末端の一支店に転落する下剋上が起こっているかもしれない。」
「いまやこの性質を表現するには量子力学におけるモノを『モノ』として捉えるよりもむしろ『量子情報』と呼ぶのに相応しいものであることが明確になっている。」
「将来的にはポパーがいうように『物理学は主観主義哲学の拠点』になるのかもしれない。たいていの研究者たちの意識がどう変わっていくか?これに影響するのが教科書の書き方だろう。」
佐藤文隆著『量子力学の100年』(青土社)