2025年4月28日、スペインやポルトガルなどで大規模な停電が発生し、29日に復旧するまで信号やATMが停止し、人々は公共交通機関やエレベーターに閉じ込められ、インターネットや通信サービスが途絶えてお互いの無事を確認することもままならなくなりました。この停電の原因はわかっていませんが、その可能性のひとつとして発表された「大気誘導振動(induced atmospheric vibration)」という現象について、専門家が解説しています。
ヨーロッパを襲った停電をめぐる初期の報道で、ポルトガルのエネルギー会社であるRENは、稀な気象現象である「大気誘導振動」が原因だと主張しましたが、その後撤回しました。
大気誘導振動に話を戻すと、RENは停電の原因に関する当初の説明の中で「スペイン内陸部における極端な気温変化により、超高圧線に異常な振動が発生しました。これは『大気誘導振動』と呼ばれる現象です。この振動により電気系統間の同期障害が発生し、相互接続された欧州の電力網全体の連続的な障害を引き起こしました」と述べています。
セイエドマフムーディアン氏によると、「大気誘導振動」は一般的に使われる用語ではありませんが、おそらく気温や気圧の急激な変化によって引き起こされる、大気中の波のような動きや振動のことを指していると考えられるとのこと。
熱波などによって地表の一部が急速に温まると、その上空の空気が熱で膨張して軽くなります。こうして発生した温かい空気の上昇は、周囲の冷たく密度が高い空気との間に圧力の不均衡を生み出し、これがちょうど池の水面に広がるさざ波のような大気の波を起こします。
一般的に、この種の大気波は「重力波」や「音響重力波」や「熱振動」と呼ばれ、波が大気中を伝わると電力インフラ、特に長距離の高電圧送電線に影響が及ぶ可能性があります。
RENが主張した「大気誘導振動」も、この現象のことを意図したものだったのだろうと、セイエドマフムーディアン氏は推測しました。