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ワンケルを超えた? ほぼ排ガスゼロの次世代ロータリーエンジン「オメガ1」とは

今年、注目を集めているのは、アストロン・エアロスペース(Astron Aerospace)社の「オメガ1」である。ワンケルエンジンでもなく、タービンでもないロータリーエンジンだ。さまざまな燃料を使用でき、排出ガスがほぼゼロで、出力重量比(パワーウェイトレシオ)が高いため、理論的には自動車やバイク、航空機の動力源として使用することが可能だという。

エンジンは2組のローターで構成されており、1組のローターの上にもう1組のローターが乗っている形状だ。上下のローターはギアを介して互いに反対方向に回転する。画像の青色で示されたロータリーは吸気と圧縮を、赤色が燃焼と排気を担当する。青色のペアはスーパーチャージャーの役割を果たし、空気を取り込んで圧縮し、プレチャンバーに送り込む。赤色のペアがこれを燃焼し、排気を行う。吸入空気は1380~2070kPaに圧縮できる(従来のブーストエンジンでは240kPa程度まで)。

空冷式で、ポペットバルブもバルブスプリングもない。可動部品は回転体だけである。ピストンエンジンのようにオフセットしたクランクシャフトはなく、ワンケルのような偏心シャフトもない。その代わり、1本の回転動力軸から直接、動力が伝達される。

また、「スキップファイヤー」機能により、さらに効率を向上させる。ピストンエンジンにおける気筒休止と同様の効果を発揮するもので、エンジンが激しく動いているときは1回転ごとに点火するが、巡航時には5回転や10回転ごとなど必要なときだけ点火する。

アストロン・エアロスペース社によると、構造の複雑さと部品点数は、単気筒4サイクルの芝刈り機用エンジンと同等だという。メンテナンスも簡単であり、オーバーホールのインターバルは10万時間に1回程度で、比較的低コストで済むとしている。