■ 1. オベリスクの発見
- 発見者: スタンフォード大学を中心とする研究チーム。
- 名称: 「オベリスク(Obelisk)」と命名された。
- 概要: これまで知られていなかった、棒状の形状に自己組織化する約1000塩基からなるRNA断片である。
■ 2. オベリスクの特徴と性質
- ゲノム: 環状の一本鎖RNAゲノムを持つ。
- 遺伝子:
- オブリン: オブリン(Oblin)と名付けられた主要なタンパク質を1つ、または2つ目の小さなオブリンをコードしている。
- 類似性: オブリンは既知のタンパク質と進化上の相同性を持たず、機能は不明である。
- リボザイム: 一部には自己切断型のハンマーヘッドIII型リボザイムをコードしているものもある。
- 宿主:
- 依存性: おそらくヒト体内の微生物に依存して複製している。
- 候補: 細菌または真菌が宿主である可能性があり、特に口腔内常在菌であるStreptococcus sanguinisが宿主である可能性が示唆されている。
- ヒトへの影響: オベリスクがヒトの健康にどのような影響を与えるかは不明である。
■ 3. 検出状況と分布
- 検出率: ヒトの腸内マイクロバイオームデータセットの約7%、口腔内のデータセットの約50%で検出された。
- 多様性: 世界中の多様な環境から約30,000種の異なるタイプのオベリスクが発見された。
- 保有期間: 人々は同じ種類のオベリスクを約300日間保持できることが明らかになった。
■ 4. 既存のウイロイド様エレメントとの比較
- 共通点: ウイロイドやヒトD型肝炎ウイルス(HDV)と同じく、独自の複製ポリメラーゼを持たない、環状のcccRNAをゲノムとする。
- 相違点:
- サイズ: ウイロイド(約350塩基)やHDV(約1700塩基)とは異なる、約1000塩基という独自のサイズを持つ。
- コードタンパク質: ウイロイドがタンパク質をコードしないのに対し、オベリスクはオブリンをコードする。HDVも「デルタ抗原」をコードする。
■ 5. 研究の評価と展望
- 研究手法: 公開データを解析したバイオインフォマティクスアプローチ(VNom)を用いており、実験的な実証は含まれていない。
- 懸念点: 査読前のプレプリントとして発表されたことから、先行者利益の確保や命名を目的として発表を急いだ印象がある。
- 今後の課題:
- オベリスクがヒトの健康に与える影響の解明。
- 宿主となる微生物の特定。
- 生命の起源や進化、合成生物学への応用といった生物学的な現象との関係性の探求。