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シリコンに溝を刻んで直接冷媒を流し込む冷却技術の実験にMicrosoftが成功

米Microsoftは9月24日(現地時間)、チップ裏面の微細な溝に直接冷媒を流し込む冷却技術「Microfluidic Cooling(マイクロ流体冷却)」の実験に成功したと発表した。

マイクロ流体冷却は、熱源となるシリコンチップの裏面に人間の毛髪ほどの太さの微細な溝をエッチングし、液体の冷媒を直接流し込むことで冷却の効率化を図る技術。本技術ではAIを用いて個々のチップに固有の熱特性を識別し、個体に応じて最適なパターンの溝を形成する。冷却プレートによって上から物理的に押さえつけないため、熱を閉じ込めないこともメリットとしている。

Microsoftの実験によれば、マイクロ流体冷却では従来の冷却プレート方式と比較して最大で3倍の除熱効果が得られ、GPU内のシリコンの最大温度上昇を65%低減できたという。冷却性能の向上によって、従来より電力密度の高いハードウェア設計が可能になるほか、電力利用効率の改善が見込める。ここではTeamsのさまざまなサービスで発生するワークロードやデータセンターにおけるAI処理を例に挙げ、運用コストの低減が期待できるとした。

Microfluidics(マイクロ流体工学)を用いた冷却技術の開発にはスイスのスタートアップ企業Corintisが協力しており、蝶の翅や葉脈の構造をヒントに実験を重ねたという。ニュースリリースでは、溝を形成する際の課題として、冷却液が滞りなく循環しつつ、シリコンが破損しない程度の深さを確保する必要があった点を挙げている。加えて、液漏れ防止パッケージの設計やエッチング方法の試験、チップの製造プロセスにエッチングを加える工程の開発も行なった。

今後は、将来の自社製チップにマイクロ流体冷却をどのように組み込むかの検討に入るとしている。また、自社のデータセンター全体でマイクロ流体工学の導入を進める。