/note/science

プラスチックをほぼ無限のエネルギーに変換する! イェール大学が示す未来のリサイクル技術

要約:

■ 1. プラスチック汚染の現状と課題

  • 汚染の深刻化: 世界で最も深いマリアナ海溝でのプラスチック袋の発見や、石油由来のプラスチックが「プラスチストーン」として地層化している現実がある。
  • 人体の蓄積: 平均的な成人の脳にスプーン1杯相当のマイクロプラスチックが蓄積されているという説がある。
  • 国際的な対応: 世界的に深刻な問題であり、国連は「国際プラスチック条約」の策定を急いでいるが、現状の取り組みは失敗が続いている。
  • 業界の注力分野: 科学界とプラスチック/石油業界は、プラスチックを燃料に変換して再利用する熱分解(パイロリシス)手法に注目している。
  • 利用可能性: 大規模化に成功すれば、プラスチック由来の「熱分解油(パイロリシス・オイル)」は、ボイラー、炉、タービン、ディーゼルエンジンなどのエネルギー需要の大きな分野で利用可能になると期待されている。

■ 2. イェール大学による新たな熱分解技術

  • イノベーションの成功: イェール大学の研究チームが、熱分解油の低コストでの大量生産に成功する可能性を示す新たな熱分解技術を開発した。
  • 熱分解の仕組み: 酸素を遮断した状態で素材を900℃の高温で熱し、プラスチックのポリマー鎖を燃料エネルギーに必要な炭化水素分子に分解する手法である。
  • 触媒フリーでの収率向上: 通常、鉱物触媒を用いて収率を高めるが、この研究では触媒を一切使用せずに収率を約66%まで引き上げる方法を発見した。
    • コスト削減の可能性: 触媒が高価で寿命の問題もあるため、この触媒フリーの手法により大幅なコスト削減が実現する可能性がある。
  • イノベーションの鍵: 3Dプリントで構築された、細孔サイズが異なる3つの区画をもつカーボン製カラムリアクター(反応器)が、反応の進行を効果的に制御する仕組みを実現した。
  • 実証実験の成果: 反応器の大型化を目指した実験で、理想的な細孔サイズ算出の前段階にもかかわらず、約56%という高い収率を達成し、技術の持続可能性と効率にさらなる伸びしろがあることを示した。

■ 3. 課題と未来への展望

  • 克服すべき課題: 熱分解油のスケールアップには、現在の技術に膨大なエネルギー消費が伴うという問題が残っている。
  • 環境負荷の懸念: 大型化によって二酸化炭素の排出量やその他の廃棄物が増える可能性があり、熱分解のコンセプト自体を「おとぎ話」として批判する専門家も存在する。
  • 現実的な解決策への期待: 現時点ではプラスチック問題を根絶するものではないが、イノベーションを追い求める科学者たちによって、いずれこの「おとぎ話」が現実的な解決策となる可能性がある。
  • 未来への要求: 世界で使い捨てプラスチック製品の量産が続く中、プラスチックに頼らない生活の重要性とともに、持続可能なリサイクル技術の開発がますます求められている。