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“室温25℃”で「超電導」か──高圧下で実現と中国チームが発表 夢の“常温常圧超電導”への布石になるか

要約:

■ 1. 研究の概要

  • 研究チームと成果: 中国の吉林大学や上海科技大学の研究者らが、ランタン・スカンジウム合金と水素化合物を超高圧下(260GPa)で反応させ、298K(約25℃)で電気抵抗がゼロになる超電導体「LaSc2H24」の合成に成功したと報告
  • プレプリント論文: 論文「Room-Temperature Superconductivity at 298 K in Ternary La-Sc-H System at High-pressure Conditions」として発表された
  • 超電導の定義: 電気を流しても中で失われることなく電気抵抗がゼロで永遠に流れ続ける状態である

■ 2. 超電導研究の歴史と課題

  • 従来の限界: これまでの超電導体は極低温でしか機能せず、実用化には液体ヘリウムなどによる冷却が必要だった
  • 研究の夢: 1911年の超電導発見以来、常温常圧超電導(通常の生活環境レベルで超電導が起こる状態)の実現が科学者たちの夢である
  • 近年の進歩: 水素化合物で高温超電導の記録が更新され、2019年には「LaH10」で250K(約-23度)での超電導が報告されたが室温には届かず、約170GPaの超高圧が必要だった

■ 3. 常温常圧超電導研究の問題点

  • 疑惑の歴史: これまで複数の常温常圧超電導研究が発表されたが、再現実験が成功しなかったり不正や捏造があったりした
  • 厳しい視線: 常温常圧超電導の研究発表に対し、世界中の研究者たちから厳しい目で見られるようになった
  • LK-99の例: 2023年に発表された「LK-99」も世界中の研究者が再現実験を試みたが成功しなかった

■ 4. 今回の実験方法

  • 材料の構成: ランタン(La)とスカンジウム(Sc)を約1対2の比率で混ぜた合金と、水素源としてアンモニアボラン(NH3BH3)を使用
  • 合成プロセス: ダイヤモンドアンビルセルという特殊な装置で物質を圧縮し、レーザーで加熱することで新物質「LaSc2H24」を合成
  • 複数セルでの実験: 各セルで異なる条件下での測定を実施した

■ 5. 実験結果

  • 超電導転移温度の観測: セル1で295K(22℃)245GPa、セル3で283K(10℃)253GPa、セル4で298K(25℃)260GPa、セル5で295K(22℃)262GPaを観測
  • 電気抵抗ゼロの確認: セル4と5では電気抵抗が完全にゼロになることが確認され、セル4で最高温度約25℃を達成
  • 圧力条件: ただし260GPaという超高圧下が条件となった

■ 6. 超電導の検証方法

  • マイスナー効果の課題: 超電導を証明する「マイスナー効果」(超電導体が磁場を内部から完全に排除する現象)は、試料が小さすぎて直接測定が困難だった
  • 代替検証法: 外部から磁場をかけたときの超電導の変化を調べることで超電導であることを確認した
  • 磁場実験の結果: セル4の試料に219GPaの圧力下で0〜9Tの磁場をかけた結果、磁場なしでは296K(23℃)だった超電導温度が9Tの磁場下では285K(12℃)まで約11度低下し、他のセルでも同様の現象が観察された

■ 7. 研究の意義と今後の課題

  • 達成内容: 真実であれば常温常圧超電導ではないものの「超高圧下での室温超電導」が実現されたことを示す
  • 検証の必要性: 論文は査読前であるため、外部の専門家による再検証が必要である
  • 実用化への道: 超高圧という条件が実用化に向けた大きな課題として残っている

MEMO: