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液体金属とバクテリアを融合させた「生きたメタル」を開発

要約:

■ 1. 研究成果の概要

  • 米ビンガムトン大学の研究チームが液体金属とバクテリア芽胞を融合させた自己修復型導電材料を開発
  • 研究詳細は2025年10月24日付で科学雑誌『Advanced Functional Materials』に掲載
  • 自己修復機能と環境応答型の機能切り替えを備えた新素材
  • 次世代ウェアラブル機器や医療デバイスへの応用が期待される

■ 2. 開発された素材の構成

  • 使用材料:
    • ガリウムとインジウムの合金(常温液体金属)
    • 枯草菌の芽胞(一般的なバクテリアの休眠カプセル状態)
  • 芽胞の特性:
    • 極度の乾燥、高温、薬品に耐性を持つ
    • 長期間不活性状態で保存可能
    • 必要時に発芽して活動再開できる

■ 3. 自己修復メカニズム

  • 従来の課題:
    • 液体金属は空気や水に触れると酸化膜が形成され電子の流れが妨げられる
    • 一般的な電子回路は微細なひび割れや変形、酸化で性能が低下する
  • 自己修復の仕組み:
    • 芽胞表面の特殊な化学構造が酸化膜と強く結合し破壊する
    • 液体金属同士が自動的にブリッジを形成し途切れた導電路を再接続
    • マイクロクラックは数分から数十分で修復される
  • 発芽時の機能向上:
    • 芽胞が発芽すると発電性細菌として電子を生成
    • 材料全体の導電性が飛躍的に向上
    • バルク金属に匹敵する導電性を実現

■ 4. 素材の特徴と優位性

  • 自己修復機能に加えた多様な特性:
    • 紙やシリコーン樹脂など柔軟な素材にパターン形成が可能
    • コストを抑えたフレキシブル電子回路の製造が実現
    • 芽胞は液体金属中で20週間以上生存可能
    • 必要なタイミングで発芽・機能化できる応答性を保有

■ 5. 期待される応用分野

  • ウェアラブルデバイスと電子皮膚:
    • 柔軟な素材への組み込みが可能
    • ひび割れや断線の自己修復機能
    • 生体信号の長期モニタリングや皮膚貼付センサーに最適
  • 埋込型医療デバイス:
    • 生体内での長期安定性
    • 微細損傷の自己修復
    • 体内センサー、神経インターフェース、人工臓器の電極材料への応用
  • ソフトロボティクスとフレキシブル回路:
    • 変形・伸縮への耐性
    • 繰り返しストレス下での高導電性維持
    • 人工筋肉や自律修復型配線など次世代ロボット開発への応用
  • 生体電子インターフェース:
    • 芽胞がイオン信号や分子信号を感知・変換
    • 電子機器と生体の架け橋として機能
    • 体内の変化をリアルタイムで電子信号に変換し異常検知や薬剤自動放出を実現するスマートデバイスへの展開可能性