■ 1. アマテラス粒子
- 2021年にテレスコープアレイ実験で日本の研究者が発見した宇宙線
- 1991年に発見された「オーマイゴッド粒子」に次ぐ観測史上2番目に高エネルギーな宇宙線
- わずか1gで地球を破壊できる恐ろしい代物
- 発生源の謎:
- 宇宙線は本来超新星爆発などの大規模な天体現象によって生成される
- 粒子固有の発生源となった天体や現象の手がかりが一向に確認できていない
- 高エネルギーの宇宙線を発するような活発な銀河はそれほど多くない
- 通常は粒子がどの方向から飛んできたかを突き止めれば有力な候補が見つかる
- 最大の謎:
- アマテラスが飛んできた方向にはローカルボイドと呼ばれる銀河などの物質が存在しない空間しかなかった
- PKS 1717+177という活動銀河核がその方向付近にあることが判明
- しかしこの銀河核は宇宙線がエネルギーを失うとされる距離の1.5億光年よりもはるかに遠い約18億光年の場所にある
- 現在の理論ではそこから届くはずがないというありえない状況
- 3つの仮説:
- (1) 銀河の磁場によって粒子の進路が大きく曲げられた説(元の方向とは異なっている)
- (2) 光では見ることができないダークマターの崩壊によって生まれたとする説
- (3) 未知の天文現象を発生源としている説
- 情報が圧倒的に不足しておりどの仮説が有力かすら検討がつかない状態
■ 2. 赤い点
- NASAが中心となって開発したジェームズ・ウェッブ望遠鏡が発見
- 赤外線を捉えることで宇宙誕生から約10億年後の初期宇宙を人類で初めて観測
- 2022年に世界中の研究者を困惑させる小さな赤い点が観測された
- 異常な点:
- 天文学では赤い光を放つ天体は成熟したものと見なされる
- しかしこの赤い点はビッグバンからわずか後から7億年後という早い時期から宇宙の至るところで複数存在
- 全てが成熟した銀河だとすれば既存の宇宙論では全く想定されていない異常な状況
- さらなる謎:
- 観測の結果、成熟した銀河にしては明るすぎる
- 直径が天の川銀河の2%未満とかなり小さく凝縮している
- 全く別の天体であるとの意見が強まっているがそれが何なのかは謎のまま
- ブラックホールとも異なる光を放っていた
- ブラックホール星仮説:
- 赤い光を1つの巨大な天体と考えた最新の研究
- 正体をブラックホール星だとする興味深い仮説が提唱された
- ブラックホール星:
- 通常の惑星のような核融合反応ではなく超大質量ブラックホールの活動によってエネルギーを得ると考えられている仮説上の天体
- 周囲を取り巻く大気層にも似た高温高密度のガスが中心にある超大質量ブラックホールに吸い込まれる過程でエネルギーを発し光り輝く
- 惑星に似た構造を持つことから既存のブラックホールとは異なるものとして考えられている
- もし宇宙誕生直後の存在だったとしたら未だ解明されていないブラックホールの生成メカニズムを紐解く重要なピースになる可能性
■ 3. UMa3/U1(ウマ3ユー1)
- 2024年に天の川銀河の外れの大熊座の方向で発見された天体
- 見た目は一見するとごく普通の小さな光
- 分類の問題:
- 銀河なのか星団なのかで専門家の中でも意見が真っ二つに割れている
- 今もなお正式な分類ができず正体不明の天体として扱われている
- 銀河と星団の違い:
- 銀河:数百万から数十億個の星を抱えダークマターによって重力的にしっかり結びついた巨大な構造体
- 星団:ダークマターをほとんど含まず数百から数千個ほどの星が集まった比較的小さい構造
- UMa3/U1の特徴:
- 直径20光年
- 抱える星の数はわずか60個
- 質量は太陽の16倍
- 星団と呼ぶにふさわしい規模
- 矮小銀河の可能性:
- 銀河の中には非常に暗く星の数が少ないにも関わらずダークマターによって束ねられている矮小銀河と呼ばれる種類が存在
- 光度比計算結果からUMa3/U1が該当する可能性が示唆されている
- UMa3/U1自体が銀河としての機能を持ち合わせていた
- 現時点ではシミュレーションや質量分布の観測結果から安定した星団である可能性の方が高いとされている
- 天の川銀河からすれば米粒程度の取るに足らない存在が銀河や星団の概念に根本的な問いを投げかけている
■ 4. ボイド
- 宇宙の大半はボイドと呼ばれる空洞で構成されていることが近年の研究で明らかに
- 宇宙の構造:
- 宇宙全体は泡のような構造
- 銀河たちがフィラメントと呼ばれる網目構造に沿って膜のように連なる
- その膜の内側、まさに泡の空洞部分に当たる領域が銀河がほとんど存在しないボイド
- ボイドの規模:
- 最低でも直径1〜1.5億光年
- 中には直径10億光年に及ぶ超巨大ボイドの存在も示唆されている
- 宇宙の大半は空洞だと言っても過言ではない
- 研究価値:
- ボイド内部は重力の影響などが少ない空間
- 宇宙の根幹に関わる情報が邪魔されにくく素直に受け取れる
- ボイドを詳しく調べられれば宇宙の謎の真実に近づける
- 未解明の謎:
- ボイドの誕生
- どんな性質を持つのか
- 空洞の存在理由
- ほとんどのことは謎に包まれている
- 完全に何の物質も存在しない超巨大ボイドの存在まで示唆されている
- 最有力の誕生仮説:
- 初期宇宙の中でほんの少しだけ低密度だった場所から物質が外側へ流れ出す
- 結果としてその部分だけスカスカになりボイドが形成された
- 逆に重力が集まりやすい高密度の場所にはガスやダークマターがどんどん引き寄せられる
- その集積の結果として銀河や星団(私たちが今いるような構造)が作られた
- 初期宇宙のほんのわずかな密度のゆらぎが何十億光年というスケールの壁と空洞を生み出した可能性
■ 5. 反物質
- アンチマターとも呼ばれる
- 質量などの性質は物質と全く同じだが電荷だけが正反対という不思議な特徴
- 謎の消滅:
- 今から138億年以上前に起きたビッグバンでは莫大なエネルギーから物質と反物質がほぼ同量生まれたとされる
- なぜかその後反物質だけが姿を消してしまった
- 現在の宇宙に反物質がほとんど残っていない
- 対消滅の性質:
- 物質と反物質は衝突すると両方とも消える
- それに相当する質量のエネルギーだけが残る
- 単純に行けばビッグバンで生まれた大量の物質と反物質は幾度となき衝突の末に消滅していたはず
- ところが現実は不思議なことに反物質だけが姿を消し物質だけが大量に生き残った
- その物質が集まって星や銀河ができた
- 寿命のずれ仮説:
- 近年の研究でこの一方的な消滅の原因は物質と反物質の性質にわずかなずれがあった可能性が指摘されている
- 全く同じだと思われていた2つが実際には反物質の方がほんのわずかに寿命が短かったという説
- 初期宇宙は一瞬の間に物質と反物質の生成と消滅が何度も繰り返される完全なカオス状態
- その中でほんのわずかな確率で反物質が先に消えるケースがあった
- その差が無限回警戒と積み重なった結果、最終的に物質だけが生き残った
- まだ仮説止まりだがこのわずかな違いが最終的に宇宙そのものの姿を左右させた可能性
■ 6. ネメシス
- 太陽の伴星であり太陽から9万5000天文単位の距離を周回しているとされている仮説上の恒星
- 存在が示唆された経緯:
- 地球で起きる周期的な大量絶滅の原因の一説としてこの天体の存在が浮上
- 太陽系のずっと外側には惑星が生まれた頃に弾き飛ばされた破片で作られたオールトの雲と呼ばれる殻のような領域がある
- そこを現在認知できていない未知の伴星ネメシスが定期的に横切る際にオールトの雲をかき乱す
- 小惑星衝突のリスクが跳ね上がり大量絶滅につながっていると考えられた
- 存在の妥当性:
- 宇宙全体で見ると太陽のように孤立した星は非常に珍しい
- ほとんどの星は最初から2つ以上の伴星で生まれたり、後から別の星を引き寄せ伴星になる可能性が高い
- ネメシスが存在すると考えれば太陽系内の天体の特殊な動きにも色々と説明がつく
- 最近では太陽も双子で生まれたと考えるのが自然だとの意見が増えている
- 未だ観測はされておらず仮説止まりだが実在していてもおかしくないくらいには現実味のある存在
- もし存在するとしたらなぜ現代の観測網を持ってしても見つからないのかが謎
■ 7. 総括
- どれだけ知識を積み重ねても答えにたどり着けないのが宇宙の魅力
- 大いなる謎の答えに手が届いたとしてもその先にはまた新たな謎が人類を待ち受けているはず