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シンクロトロン核融合とは?新会社『フュージョンハーモニー』が発表しました。

要約:

■ 1. フュージョンハーモニーの発表

  • 常温環境で核融合を実現するというシンクロトロン核融合をフュージョンハーモニーが発表している
  • 核融合は原子核同士を融合する技術
  • 重水素と三重水素を核融合してヘリウムを作るDT反応が核融合研究の主流であり、シンクロトロン核融合もこのDT反応を採用している

■ 2. 核融合の基本原理

  • 重水素と三重水素を単純に混ぜただけでは核融合することはない
  • 静電気の反発力によって跳ね返されてしまう
  • 通常、核融合を発生するためには反発力に打ち勝って衝突させるために高温プラズマが必要
  • しかしシンクロトロン核融合では不要とされている

■ 3. シンクロトロン核融合の構成

  • シンクロトロン核融合の主役となるシンクロトロンは電子加速器と電子周回装置によって構成されている
  • 「核融合の原理」という説明がされている
  • このシンクロトロンによってイオンを高密度で蓄積できるとされている
  • しかしイオンを高密度で蓄積してもそれだけで核融合をすることはない
  • どの辺りが核融合の原理なのかよく分からない

■ 4. 核融合炉のイメージ

  • 核融合の原理を利用した核融合炉のイメージ画像が提示されている
  • 燃料イオンが循環してお互いに融合することにより中性子を発生させて水を加熱するとされている
  • しかしなぜ核融合をするのかという点については言及されていない
  • 説明文書も提示されているが明朝体とゴシック体のフォントが1つの単語の中に混在するかなり奇妙な文書
  • 相変わらず密度の話しか出てこない
  • 最後に核融合率はトカマクよりも高いと書かれている

■ 5. トカマク装置との比較

  • フュージョンハーモニーはトカマク装置JT-60SAをライバル視している
  • 比較によりトカマク核融合よりシンクロトロン核融合が優れているとアピールされている
  • 特に正味のエネルギーを得られると主張されている点が注目される
  • シンクロトロン核融合装置の消費電力は100kWで出力電力は5000kW
  • 入力した電力の50倍になるとされている

■ 6. フュージョンハーモニーの背景

  • フュージョンハーモニーは2025年7月に設立されたばかりの非常に新しい核融合ベンチャー企業
  • 近年、核融合をテーマとしたベンチャー企業の設立が流行っている
  • GoogleMapで調べてみると本社所在地には研究所らしい施設が存在することを確認できる
  • レンタルオフィスに本社を置いているようなどこで研究しているのかよくわからない会社ではない
  • 建物の壁を見るとホモトロンとペイントされていることがわかる

■ 7. 山田広成氏の経歴

  • この住所の場所には元々放射光技術研究所という会社が存在していたがすでに廃業されている
  • 放射光技術研究所は立命館大学初のベンチャー企業
  • 卓上型放射光装置ミラクルといった製品を開発販売していたが2019年9月13日に破産している
  • この会社を経営していたのは立命館大学の山田広成名誉教授
  • 卓上型放射光装置とは電子蓄積リングの電子軌道に微小金属を挿入することによってX線を発生する装置であると説明されている
  • 今回シンクロトロン核融合を発表しているフュージョンハーモニーの社長は山田広成氏
  • 核融合という新しい分野に挑戦されている

■ 8. 副社長の情報

  • ちなみに副社長の名前も記載されているが、この人物が代表を務めているとされるピンポイントマーケットという会社は法人番号を検索しても出てこなかった

■ 9. 山田名誉教授のコメント

  • 山田名誉教授は「私たちのアプローチはプラズマを閉じ込めるのではなくイオンを閉じ込めるという逆転の発想です」というコメントを発表されている
  • 放射光技術研究所が開発した卓上型放射光装置ミラクルを改良して電子ビームを利用し核融合条件を作り出したとされている

■ 10. シンクロトロン核融合の特徴

  • シンクロトロン核融合にはプラズマ不要、小型低コスト、高効率、高速、常温動作、分散型エネルギーといった特徴があるとされている
  • よくある常温核融合に近い特徴が挙げられているが、シンクロトロンといった装置を使う点が異なっている

■ 11. 公的評価について

  • フュージョンハーモニーでは公的評価として山田名誉教授の業績を提示している
  • しかし核融合とは全く関係のない研究テーマであるため、シンクロトロン核融合に対する公的評価ではない
  • フュージョンハーモニーは相対論的電子ビームによる核融合という1970年代に発表された論文を提示している
  • この論文は相対論的電子ビームによる核融合の研究の発展について概観するという内容
  • 電子ビームで核融合できることを実験して確認したという内容ではない

■ 12. 細かい疑問点

  • 説明文においては水タンクの容積が500Lであり20MWの熱で加熱されるという説明がされている
  • 500Lではすぐに蒸発して足りなくなりそう
  • 強力な冷却機構があるのかもしれないが気になるところ

■ 13. まとめ

  • 日本の核融合ベンチャー企業フュージョンハーモニーが新しい核融合を発表している
  • 発表されているシンクロトロン核融合は高温プラズマを使用せずに核融合を実現できるとされている
  • ただし具体的な核融合のメカニズムについては説明がなく謎に包まれている

MEMO: