■ 1. 水の戦争と水資源問題
- 書籍「水の戦争」の概要:
- 農業用水からAIのデータセンターまで幅広い問題の根底を解説
- 人類の歴史は水を巡るものであった
- 中東の紛争を含め、水がどれほど貴重になるかを示す
- 日本の水問題:
- 上下水道が完備された日本は世界的に恵まれているように見える
- しかしバーチャルウォーター(仮想水)の観点では水が豊かとは言えない
- 輸入食品にかかる水コストが日本に降る雨の量を上回る
- 現代の水に関する課題:
- データセンターの水消費拡大
- 水に関する投棄問題
- 外資による水道管理での異次元の値上げ
- 地下水の汲み上げ問題による地盤沈下
- 地下水の汚染
- リニア新幹線による水脈の枯渇問題
- フッ素化合物の問題
- テクノロジーと水:
- 半導体の洗浄や化学合成に必須の脱イオン水
- データセンターの冷却水
- 農業用水
- AIへの質問のたびに大量の水が蒸発する
- 関連する環境問題:
- 気候変動による水不足や水過剰
- 二酸化炭素の排出量問題
- 国連の見解では地球が沸騰する危機
■ 2. 土を育てる農法の概要
- 書籍「土を育てる」(ゲイブ・ブラウン著)の内容:
- 化学肥料や農薬などの慣行農法を抜本的に見直す話
- 不耕起栽培を基準にかなり流行している
- ブラジルなどでも数万ヘクタールを不耕起栽培している事例がある
- 耕起作業を削減できる点がコストパフォーマンスに寄与
- 不耕起でも溝を掘るなど最小限度の耕作は行う
- 溝に点滴のように少量の肥料を入れ土を被せて植える方法もある
- ゲイブ・ブラウン氏の特徴:
- 化学肥料を断つことにこだわっている
- 化学肥料と耕起の2つが同レベルで土地にダメージを与えると考えている
- 動物と植物と微生物を利用して窒素・リン酸・カリウムの問題を解決
- 従来の輪作を発展させた手法
■ 3. 輪作と土壌管理の歴史
- 輪作の仕組み:
- 麦・豆・蕪・大根などをいくつかの区画に分けてローテーションさせる
- 連作障害対策になる
- 豆科などが持つ窒素固定細菌でリン酸を補給
- 畜産物から出る糞粉などの肥料成分を活用
- 同植物の得意分野をうまく活用して土を肥やし食料生産量を増やした
- アメリカ農業の問題点:
- 輪作の概念が考えられていなかった
- 麦を100年近く連作していた農家が多かった
- 大規模農場の多くが1つの品種にこだわる単作ばかり
- 除草して土がむき出しになり、土が何センチも風で吹き飛ぶ
- 日本の農業との比較:
- 水稲栽培では土壌微生物が水の出し入れで頻繁に入れ替わる
- 裏作で大豆・麦・昔はレンゲなどの緑肥も入れていた
- 「怒りの葡萄」があった理由が理解できる
■ 4. バイソンと土壌形成の関係
- 北米大陸の肥沃な土壌の形成:
- アメリカ大陸の土はウクライナのチェルノーゼムに並ぶほど肥えていた
- 一因はバイソンの食と行動にある
- バイソンが草をかじると修復のために植物が土壌細菌の力を借りる
- 代価として植物が光合成から出た生化物(炭素化合物)と交換する
- 微量栄養素も運ばれる
- 土の中で行われる交易の過程で大量の炭素が土壌に固定化された
- 一説では北米大陸の植物活動が地球を寒化させたという説もある
- 土壌劣化の始まり:
- バイソンの乱獲からスタートしている
- ユーラシア大陸との類似:
- 新鮮な水と草を求めて移動する遊牧民がバイソンと同じ動きをした
- 土壌の炭素割合を増やした
- 穀倉地帯とロシアのステップがほぼ一致するのは偶然ではない
- 歴史の皮肉:
- 農業をしない人々が最も農業に適した土地を作った
- 文明の破壊者であった遊牧民が地球環境の保全者としての側面を持っていた
- 遊牧は究極の不耕起といえる
■ 5. 土壌劣化と文明の興亡
- 中国の王朝交代との関連説:
- 農業による土壌の劣化が原因の一つとされる
- 土壌が劣化することで水害や旱魃に弱くなる
- 飢饉が発生して税金に苦しむ農民が反乱を起こす
- 王朝交代が起こる
- 戦乱の間に土壌が回復し最初に戻る
- 人間の歴史のサイクルに土壌が深く関係していた可能性
- 現代の状況:
- 科学の力と地下資源・化石燃料によって抑えられている
- いつまで持つかは不明
■ 6. 再生型農業の効果と利点
- 環境面での効果:
- 耕作にかかるエネルギーを削減
- 化学肥料・薬剤の削減でコストを減らす
- 世界全体の石油消費を抑えられる
- 大気中の二酸化炭素を減らせる
- 化学肥料による水質汚染も減らせる
- 土が良くなれば保水性が上がる
- 異常気象対策になる
- 余った水とエネルギーをAIや宇宙開発に使える
- 経営面での利点:
- 経営を多角化することでリスク分散ができる
- 様々な植物を植えて様々な動物を飼う
- 環境問題である農業を逆手にとって環境の改善に利用できる
- 収益源の多様化:
- 緑などから蜂蜜を作る
- 畜産物から肉や卵にミルクを得る
- 穀物や野菜も得られる
- 排棄野菜を鶏に与えてゴミを資産に変える
- 糞粉の処分問題も農園の中に組み込まれ確実に利益にしている
■ 7. 慣行農法との比較と課題
- 慣行農法の問題:
- 栄養素とカロリー面では慣行農法に勝ち目がない
- 肥費や農薬剤も慣行農法は抑えられている
- コスト面でも収益面でも差が大きい
- 農薬の逆説的問題:
- 農薬は害虫を駆除するが、施せば施すほど耐性のついた害虫や雑草に悩まされる
- 短期的には良くても長期的に見ると厳しい
- どちらが損か得か誰にもわからない
- 移行期間の課題:
- いきなり慣行農法はやめられない
- 準備期間に年単位が必要
- 農薬で有機物や細菌の減った農地でいきなり新規農法になるのは現実的ではない
- 耕起作業の問題:
- 耕起作業で炭素が抜けて土壌の劣化をもたらす
- 団粒構造や水はけの良さ、保水性が壊れる
- 除草作業は大変だが制限付きで除草剤を使用している
- 化学肥料についても流出する分を可能な限り別の作物に吸着させる
■ 8. ゲイブ・ブラウン氏の農場規模と実績
- 農場の規模:
- 2400ヘクタールを保持
- 日本の農家平均から見て800倍から1200倍
- この面積を農薬なし・化学肥料なし・除草剤も微量で運営
- 畜産業も加わる
- リスク分散の効果:
- 農業が失敗しても畜産で補える
- 畜産が失敗しても農業で補える
- 両方失敗しても農場内部で収益の潰しが効く
- 不耕起だからこそ可能:
- この規模は不耕起だからこそ実現できる
■ 9. 土を育てる5つの原則
- 原則の内容:
- 土を物理的にも化学的にも乱さない
- 土を被覆する
- 多様な植物を植える
- 土壌微生物に年中根から栄養を与える
- 動物を入れる
- 6つ目の原則(後から追加):
- 背景の原則
- その土地と気候にあった植物選択が重要
- 気候変動の激しい時代に最も重要かもしれない
- その土地の風土が風土を作る
- 科学力で無視するのは不自然
■ 10. 実体験による検証
- 著者の祖父の事例:
- 不耕起以外は全部やっていた
- 庭の土が真っ黒なのは炭素の色だと納得
- 耕起などでかなり劣化させたが水以外にはまだ強い
- じゃがいもを5年連作しても少し地力が落ちた程度
- 荒地から穀倉を作り出した
- 具体的な方法:
- 畑の中に鶏小屋を作る
- 定期的にもみ殻や菊を入れ肥料として堆積させ続ける
- カブトムシの幼虫が湧く
- 中を時々かき出すか、鶏糞そのものを解体したり丸ごと畑化
- トウモロコシ・ネギなど色々栽培
- 違いで育った鶏の卵が最もおいしかった
- 庭の雑草も水仙以外は全部きれいに除草してくれた
- 庭鶏が長年日本で飼われ続けた理由がわかるほど便利な鳥
■ 11. 世界システムの脆弱性と対策
- 現代社会の脆弱性:
- 化学肥料の高騰
- 石油の問題
- グローバル社会の不安定化
- 石油の採掘に関する採算性もあと15年程度
- アメリカで農業が続けられる水問題に並ぶタイムリミット
- 石油が確実に上がるか手に入らない可能性が現実的になった
- 資源の争奪が起きれば時間制限はもっと早くなる
- アメリカがベネズエラと揉めているのも石油の問題
- 日本の状況:
- 経済性も悪化しインフレがどこまで悪化するか不明
- 土に投資した方がはるかにまし
- AIと人間が水を奪い合う未来の可能性
- 地球温暖化が悪化すればAIの冷却も間に合わなくなる
- 土壌へ炭素を押し込めていかないとダメになりそう
- 自給の重要性:
- 自国で生産できることは大きな保険
- 有事の際に助からない人間を減らせる
- 貧乏になった日本人をインフレから救う
- 共有地の悲劇が全世界で発生している
- 家計を助けるために検討が必要
■ 12. 循環システムの重要性
- 循環の本質:
- 生態系や循環システムを構築できれば自然に対する観察力が重要になる
- 消滅か無限という循環
- 生命の輪は農業では確認されている
- 人間も植物も家畜も微生物も全ては小さな要素に過ぎない
- それらをうまく組み合わせて利益を得ていく
- 化石燃料もこの循環の中に組み込まれている
- 地球環境の最適性を目指すしかない
- 現代への教訓:
- 物を知る必要はないが物について考えておかないといけない
- 家庭菜園から経営まで地球規模まで考えを巡らせられる
- 現在の全てが循環不全
- システムの総取り替えが必要な時期に来た
- 一人一人が考えておかないと容易に詰む
- 草の重要性:
- 草を絶やしてはいけない
- 草を生やし続けなければならない
- 葉は家畜の餌になる
- 根は微生物たちを養う
- 人間もそれらから養われる
- 私たちは自分の足元さえも知り得ていない