■ 1. オメガ計画の概要
- 正式名称と通称:
- 正式名称は群分離消滅処理技術研究開発長期計画
- 通称はオメガ計画(OMEGA計画)
- Option Making of Extra Gain from Actinoidesの頭文字から命名
- 目的:
- 放射性廃棄物の無害化を目指す国家プロジェクト
- 高レベル放射性廃棄物は原子力発電所を運転することにより排出される
- その処理方法については昭和時代からすでに課題となっていた
- 実施期間:
- 昭和63年度(1988年)に策定
- 1988年にスタートして2000年に終了
- 12年間のプロジェクト
- 昭和時代は64年まであるが1月7日で終了しているため、年度としては63年度が最後
- 大部分が平成時代に入ってからの事業
- 成果:
- 12年間の成果を取りまとめた結果報告書が作成されている
■ 2. 群分離技術の内容
- 群分離の意味:
- 有害種や超寿命核種を選別分離するという意味
- 放射性廃棄物には様々な核種が混在しているため処理前に分離する必要がある
- 超ウラン核種の分離:
- 超ウラン核種の分離が重要視されている
- 具体的にはネプツニウム・プルトニウム・アメリシウム・キュリウムなど
- 原子番号がウランよりも大きいことから超ウラン核種と呼ばれる
- 超ウラン核種の特性:
- 半減期が非常に長く長期的な安全管理が必要
- 低レベルの放射性廃棄物であっても地層処分する必要がある
- コスト削減の動機:
- オメガ計画作成時点で高レベル放射性廃棄物については地層処分するという方針がすでに示されていた
- 低レベルの放射性廃棄物も地層処分するとなると地下処分施設の規模を大幅に拡大する必要がある
- 処理コストが膨大になってしまう
- 超ウラン核種について核種変換技術(消滅処理技術)によって無害化することができればコストを削減できるのではないかというアイデア
■ 3. 消滅処理技術の内容
- 消滅技術の定義:
- 超寿命核種を短寿命または非放射性核種に変換する処理
- 高速炉や加速器によって実現することを目指していた
- 現在では核種変換技術と呼ばれることが多い
- オメガ計画期間中の取り組み:
- 消滅処理は概念設計のみが実施されている
- 実験施設の整備には至っていない
■ 4. 研究テーマと実施内容
- 分離技術の研究:
- 湿式乾式法による分離プロセスの構築
- 実証試験
- 廃液残渣の有用金属回収
- 分離した核種の有効利用技術
- 有用金属回収:
- 放射性廃棄物の中にはルテニウムやロジウムといった白金族元素が含まれている
- ラジオアイソトープとして活用できる核種など有用となりうる物質が含まれている
- それらを取り出して有効活用できないかという点が研究されていた
- 実施機関と成果:
- 日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構、電力中央研究所がそれぞれの成果を発表
- 模擬廃液を用いたラボレベルの実験には成功している
- オメガ計画の終了から25年以上が経過した現在、特に実用化はされていない
■ 5. 現在の研究状況
- 研究の継続:
- このような研究は現在も続けられている
- 2025年3月、使用済みの核燃料からアメリシウムを分離回収することに成功したと日本原子力研究開発機構が発表
- 組織の統合:
- 日本原子力研究開発機構は日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が統合して誕生した組織
- 2005年に設立された
- オメガ計画の成果は引き継がれている
- 後継計画:
- オメガ計画の後継となる計画は策定されていない
■ 6. 国際協力の状況
- オメガ計画における国際協力:
- 国際協力もテーマの1つとなっていた
- 報告書においては欧州やアメリカの研究機関と連携したとされている
- 具体的な成果については示されていない
- 国際的な知見を共有したといったふわっとした表現に留まっている
- 国際的な関心の低さ:
- 国際的に見ると放射性廃棄物を無害化するといったことに興味を示している国はほとんどない
- 素直に地中処分した方が結局は低コストであるという考え方が主流
- フランスの事例:
- 3km×5kmといった地下都市と言える規模の広大な地下処分施設の計画が進められている
■ 7. 核種変換実験施設の建設
- 建設開始時期:
- オメガ計画の終了後10年以上が経過した2014年度に入ってから核種変換実験施設の建設が始まった
- 建設の背景:
- 東日本大震災により放射性廃棄物の処理技術を開発することに対する関心が高まったことが背景
- 施設の構成:
- ADSターゲット試験施設
- 核種変換物理実験施設
- 2種類の施設によって構成されている
- 稼働状況(2025年現在):
- 稼働しているのはADSターゲット試験施設のみ
- 核種変換物理実験施設については建設検討に留まっている
■ 8. 実用化の課題
- 技術的成果:
- 原子レベルでは核種変換・無害化に成功している
- 経済的課題:
- 陽子加速器の運転には膨大な電力を消費する
- 経済的な観点から見てこのような技術の実用化には大きな壁がある
■ 9. まとめ
- オメガ計画の評価:
- 放射性廃棄物の無害化を目指すオメガ計画が30年ほど前に進められていた
- 群分離技術の開発において一定の研究成果を上げている
- 実用化はされていない
- 現在の動向:
- 放射性廃棄物の無害化といったテーマは東日本大震災以降日本国内において見直されてきている
- 将来の可能性:
- いずれ第2次オメガ計画といった国家プロジェクトがスタートするかもしれない