■ 1. 研究の概要
- 2025年12月に京都大学のシゴリ・マクニール率いる研究チームが白色矮星に関する新発見を発表
- 一部の白色矮星が外部の力によって高温を保ち続けている可能性を示した
- 従来は白色矮星は冷えゆくだけと考えられていた
■ 2. 白色矮星の基本特性
- 恒星が寿命を迎えて燃え尽きた後に残る超高密度の天体
- 代表例のシリウスBは地球とほぼ同じ大きさで質量は太陽とほぼ同じ
- 密度は1立方センチメートルあたり2トンから3トンで小指の先ほどの大きさでアルファードやランドクルーザーくらい重い
- 内部ではエネルギーを生み出さず余熱で白く輝いているのみ
- 完全に冷えるまでには1000兆年かかる
■ 3. 恒星の構造と核融合
- 恒星は内部の元素の核融合によりエネルギーを生み出して自ら輝く天体
- 水素やヘリウムが自身の重力で集まった巨大なガスの塊
- 重力による収縮する力と核融合による膨張する力が釣り合うことで丸い形を保つ
- 4つの水素原子核が1つのヘリウム原子核に変換される核融合反応で熱エネルギーを発生
■ 4. 恒星の最期と白色矮星の形成
- 中心部の水素を燃やし尽くすとヘリウムの中心核と水素の外層という構造に変化
- 外層で核融合が進み膨張して赤色巨星になる
- 中心部ではヘリウムの核融合が進み炭素や窒素や酸素などの重い元素が蓄積
- 質量が太陽の0.08倍から8倍程度の恒星は中心部に酸素ができる頃に核融合が終了
- 最外層の水素が重力を振り切って宇宙に放出され惑星状星雲となる
- 炭素と酸素でできた中心核がポツンと残り白色矮星になる
■ 5. 縮退圧のメカニズム
- 核融合停止により膨張する力が消失し重力により中心核が一気に縮む
- ある程度収縮したところで電子の縮退圧が重力と釣り合い進行が止まる
- 電子などフェルミ粒子はパウリの排他原理により2つ以上同じ量子状態を取れない
- 超高密度になるとエネルギーの高い準位まで電子が占有
- 原子をおよそ1/10000まで圧縮すると電子が激しく運動を始めこれが縮退圧
- 縮退圧は温度によらず密度のみで決まるため冷えても弱くならない
- 縮退圧で支えられている星を縮退星と呼ぶ
■ 6. 質量の大きい恒星の末路
- 質量が太陽の8倍以上の恒星は中心部の核融合が鉄まで進む
- 鉄は最も安定な原子核のためこれ以上核融合を起こさず中心部に溜まる
- 核融合の燃料が尽きると電子の縮退圧が対抗できず自らの重力で一気に潰れる
- その反動で銀河と同じくらいの輝きを放つ超新星爆発を起こす
- 太陽の8倍から30倍の場合は中性子星かパルサーが残る
- 太陽の30倍以上の場合は中性子の縮退圧でも耐えられずブラックホールになる
■ 7. ダイヤモンド星
- 白色矮星は酸素や炭素で構成されているため冷えていく過程で結晶化して巨大なダイヤモンドになると考えられる
- 地球から約104光年の距離にある白色矮星HD190412Cは結晶化が始まっている証拠が観測されている
- 白色矮星は重力が非常に大きいため近づいただけで人間は即死
■ 8. 連星系の白色矮星
- 恒星の多くが連星として誕生しており太陽のような単独星の方が珍しい
- 連星は2つの恒星が重力的に結びついてお互いの周りを公転する天体
- シリウスBは一等星のシリウスAを主星としその周りを約50年周期で公転する伴星
- 白色矮星の連星も多く存在し古いものが多い
- 従来は表面温度が4000ケルビン近くまで下がっている状態と考えられていた
■ 9. 短周期連星での観測結果
- マクニールの研究チームが短周期連星系の白色矮星のグループを観測
- 多くが予想される大きさの約2倍で表面温度も1万ケルビンから3万ケルビンという超高温状態
- 短周期連星はお互いの距離がめちゃくちゃ近いため公転が超高速
- 白色矮星プラス白色矮星か白色矮星プラス低質量の恒星の組み合わせが多い
- 元々は離れた連星だったが片方が赤色巨星になった際にもう片方を飲み込み共通外層の中に存在
- ガスの抵抗により軌道が劇的に縮小しお互いがめちゃくちゃ近くなる
■ 10. 潮汐力による加熱メカニズム
- 研究チームは連星における潮汐力に秘密があると考えた
- 潮汐力は天体の重力が別の天体を変形させようとする力
- 近接連星はお互いの重力による潮汐力でお互いに変形し軌道運動にも影響
- 連星の軌道が楕円の場合潮汐力の向きが周期的に変わり天体は変形を繰り返す
- この時天体の内部で摩擦が生じ熱が生まれる現象を潮汐加熱と呼ぶ
- 潮汐加熱はホットジュピターの高い表面温度や特徴的な軌道を説明するのに使われている
■ 11. 理論モデルの構築結果
- 公転周期が1時間未満という超短周期でヘリウムで構成された白色矮星連星において温度上昇を説明する理論モデルを構築
- 白色矮星においても潮汐加熱が重要な役割を果たしていることが示された
- 小さな方の白色矮星からの潮汐力によって大きいけれど質量の小さい伴星の内部に摩擦熱が発生
- 伴星の表面温度が1万ケルビン以上になることが理論的に説明できた
- 連星の相方からの潮汐加熱によって白色矮星の高温状態が維持されているが核融合は再開しない
- 潮汐加熱による温度上昇は白色矮星の膨張を引き起こし質量移動開始時に予測される大きさの2倍になる可能性
■ 12. 質量移動
- 連星において一方の星から他方の星に向けて起こる物質の移動
- 恒星が赤色巨星化しその半径がロッシュローブを超えるとその部分の物質がもう片方の星に引き寄せられる
- ロッシュローブは主星と伴星の重力が公転による遠心力と釣り合う面
- 短周期連星の白色矮星は数十億年前に形成された古く冷たいものでも質量移動が始まる時点で高温で膨張した状態になり得る
■ 13. 宇宙現象への影響
- この種類の連星系は激変星やIa型超新星といった大規模な宇宙現象の起源になる
- 激変星は明るさが激しく変動する変光星の総称
- 新星は主星が白色矮星で伴星が赤色星の近接連星で起こり伴星の水素ガスが白色矮星へ流れ込み降着円盤を作り一時的に爆発
- Ia型超新星は伴星から白色矮星にガスが流れ込んだり白色矮星同士が衝突したりして白色矮星の質量が太陽質量の約1.4倍を超え電子の縮退圧が重力に負けて起こる激しい爆発
- この質量限界をチャンドラセカール限界と呼ぶ
■ 14. Ia型超新星の特徴と研究への期待
- 爆発直前の白色矮星の質量はどれもチャンドラセカール限界にほぼ等しい
- Ia型超新星もピーク時の明るさである絶対等級がほぼ同じという特徴
- 見かけの等級が明るいほど近く暗いほど遠くにあると分かりIa型超新星が出現した銀河までの距離を測る物差しとなる
- 研究チームは今回の発見からIa型超新星に至る過程をより深く理解することを目指す
- 宇宙重力波望遠鏡LISAなどで観測される重力波も白色矮星連星の研究に役立つことが期待される