■ 1. マイクロリアクターの概要
- 東京科学大学が手のひらサイズのマイクロリアクターを開発したと発表した
- マイクロリアクターは固体酸化物型の燃料電池である
- 電解質にセラミックスを使用する固体酸化物型燃料電池はエネファームなどですでに実用化されている事例もある
- 燃料電池には様々な種類がある
■ 2. 固体酸化物型燃料電池の小型化の課題と解決
- 固体酸化物型の燃料電池は動作温度が高いため小型化には適していない
- 東京科学大学はこの固体酸化物型の燃料電池を小型化かつ断熱化することによって手に持てるようにした
- さらに実際に発電できることを実証している
- マイクロリアクターを使用して電動の小型ファンを駆動している様子が公開されている
- 黒色のボックスがマイクロリアクターである
■ 3. 内部構造と断熱技術
- 箱の内部構造は反射膜を重ねた軽量断熱材による多層断熱構造によって熱放射を大幅に抑制している
- 高い耐熱性と断熱性の両立を実現している
- 燃料電池セルを加熱する電気ヒーターの付近では800度程度になる
- ボックス外側の温度は25度から80度程度の範囲に収まっている
- 80度はかなり熱いが市販されている高温モデルのカイロと同じ程度であり手に持てる程度の温度である
■ 4. 燃料電池セルの構造と急速加熱への対応
- 起動時には電気ヒーターによって800度にまで急速加熱する
- このような急速加熱にも耐える構造とする必要がある
- 東京科学大学の研究チームは熱応力を緩和することができるカンチレバー構造を採用することによってこの問題を解決している
- 片側に一端のみを固定しているため中央の燃料電池セルが加熱されて熱膨張してもクラックが入ることはない
- 起動用の電気ヒーターは10W程度の電力を供給することによって燃料電池セルを必要な温度にまで加熱することができる
- 燃料電池自体は太陽誘電性の燃料電池セルを使用している
■ 5. 断熱性能の向上と起動時間
- ボックスの内部に充填するガスをクリプトンに置き換えることによって断熱性能を高めることができ高温に加熱できる
- 通常固体酸化物型燃料電池の起動時間は15分から30分程度かかる
- 今回発表されているマイクロリアクターにおいてはわずか5分程度で起動することができる
- 起動時に電気ヒーターを駆動する必要があることからマイクロリアクターは単体で使用することはできない
- 乾電池などの補助電源を確保する必要がある
■ 6. 利用事例と発電性能
- マイクロリアクターの利用事例が示されている
- 燃料電池の小型化によりポータブルエネルギーシステムへの展開を可能としたエッジデバイスに直接給電できる可能性が出てきた
- ただしマイクロリアクターの発電力は示されていない
- 最大出力密度は630度の場合において121mW/平方cmであると発表されている
- セルの直径を10mm程度とした場合セル面積は0.785平方cm程度となる
- 単純に計算すると発電力は95mW程度と求めることができる
- 100mW程度あれば低消費電力のモーターを駆動してファンを回すことはできる
- デモンストレーション画像との整合性も取れそうである
- ただ起動時に10Wを使って発電力は0.1W程度だとすると少し微妙な印象もある
■ 7. 安全性の検証
- 運転中の燃料電池マイクロリアクターに対してドリルで穴を開けるといった破壊試験も実施されている
- ボックスが壊れて断熱機能が失われると速やかに水素の自然発火温度以下に冷えてしまうため火災に至ることはなく安全に停止する
■ 8. 実用化に向けた課題
- 実用化に向けてはかなり高価であるという点が問題になりそうである
- マイクロリアクターは材料として高価なイットリアや安定化ジルコニアを使用している
- さらに内部に酸素や水素などの燃料ガスが通るマイクロ流路を形成する必要があるなどあまり大量生産には向いていない
- ボックス内にクリプトンを充填することによって断熱性能を向上しているがクリプトンは気体の中でも特に高価であり純度の高いものでは100mlで100万円を超えるという事例もある
■ 9. マイクロリアクターの利点
- マイクロリアクターには良いところもある
- 固体酸化物型の燃料電池は水素のみではなくエタノールやプロパンガスといった多様な燃料を利用することができる
- エタノールやプロパンガスは比較的簡単に入手することができる
- 小型の燃料電池に対して持続的に水素を安定供給する小型の装置を作ることは難しい
- エタノールであれば実現しやすくマイクロリアクターの燃料として適している
■ 10. 今後の展望
- 今後の展望として長時間の連続動作に耐える信頼性を確保するために長期耐久性や安全性の検証を行う必要がある
- 将来的にはエッジデバイスやオフグリッド環境において長時間自立稼働をできる次世代発電システムとして実用化を目指すとされている
■ 11. まとめ
- 東京科学大学がマイクロリアクターを開発したと発表している
- 動作温度が高温であり小型化が難しいとされていた固体酸化物型の燃料電池を手のひらサイズにまで小型化している
- 実際に発電できることは実証されている
- 実用化に向けてはマイクロリアクターの低コスト化を進める必要がありそうである