■ 1. 研究概要
- 京都大学などの研究チームがウランテルル化物(UTe2)による超電導がスピン三重項超電導であるとする強い証拠を発見しプレスリリースを発表
- ウランテルル化物は2019年に発見された比較的新しい超電導物質
- 日本原子力研究開発機構が開発した溶融フラックス法によって合成が可能
■ 2. 超電導の基礎知識
- 超電導とは物質を低温に冷却すると電気抵抗が0になる現象
- 発見から100年以上が経過し様々な超電導物質が発見されている
- スピン一重項超電導(従来型): 電子2個が逆向きのスピンで対を形成
- スピン三重項超電導: 電子が同じ向きのスピンで対を形成
■ 3. スピン磁化率の違い
- スピン磁化率: 外部磁場に対してスピンがどれだけ反応し向きを揃えるかを示す指標
- スピンが磁場に強く反応する場合に大きくなる
- スピン一重項超電導: スピンが反対方向に固定されるため超電導状態でスピン磁化率が減少
- スピン三重項超電導: スピンが同じ方向に揃うためスピン磁化率が減少せず外部磁場で増加する可能性がある
■ 4. 実験結果
- ナイトシフト(スピン磁化率に比例)の測定グラフを使用
- 縦軸: 磁場の強さ / 横軸: 温度 / 背景色: スピン磁化率の大きさ
- 青色がスピン磁化率小 赤色に近づくほどスピン磁化率が大きいことを示す
- 磁場5テスラ付近を境にスピン磁化率が回復し超電導状態も強化されることを確認
- 通常のスピン一重項超電導では起こらない「スピン磁化率が常電導状態と同じレベルになる」振る舞いを発見
- 臨界磁場の傾きも5テスラ付近を境として変化し傾きがより急になることを確認
- これらの結果がスピン三重項超電導の有力な証拠となる
■ 5. トポロジカル量子計算への応用可能性
- スピン三重項超電導体の中にはトポロジカル超電導体の性質を示すものが存在
- トポロジカル超電導体: 表面や端部にマヨラナ粒子と呼ばれる堅牢な電子状態が現れる
- 量子コンピューターにおける課題: 量子ビットが外部影響を受けやすく計算エラーが発生しやすい
- マヨラナ粒子を利用したトポロジカル量子計算により量子計算エラーを劇的に削減できると考えられている
- ウランテルル化物がトポロジカル超電導体であることが確認されれば実用的な量子コンピューター実現の鍵となる可能性がある