■ 1. スノーボールアースとスターティアン氷期の概要
- 新原生代中期(10億~5億4200万年前)に「スノーボールアース」と呼ばれる全球凍結状態が発生したとされる
- スターティアン氷期は約7億1700万~6億4300万年前に起き、約5600万年にわたって継続したとされる
- 地球の状態については以下の2つのシナリオが提唱されてきた
- スノーボールアース: 熱帯・赤道付近を含む地球全体が氷に覆われた状態
- スラッシュボールアース: 熱帯地域に薄い氷やわずかな水域が残る状態
■ 2. 既存説における矛盾点
- 地球規模の気候変動は炭素と酸素の循環に関連する
- 炭酸塩-ケイ酸塩サイクルの仕組み:
- ケイ酸塩岩石が風化する際にCO2および水と反応し大気中からCO2を除去するサイクル
- 氷期になるとこのサイクルが著しく遅化または停止する
- 火山性CO2が蓄積して気温が上昇し一定温度に達すると氷河が融解して氷期が終了する
- ハーバード大学の研究チームはこのサイクルによる氷期終了の時間的スケールを約400万年と指摘
- 5600万年という長期継続の説明とサイクルの時間的スケールとの間に矛盾が存在する
- 氷期が長期化すると酸素が枯渇するため本来は5600万年の生命存続が不可能なはずである
■ 3. 研究手法
- ハーバード大学研究チームが地球の気候・炭素・酸素の循環をシミュレートするモデルを構築
- スターティアン氷期に関する地質学的・生物学的観測結果に適合するモデルを探索
- 以下のパラメータについて複数の条件をテスト
- 火山活動の規模
- ケイ酸塩岩の風化速度
- フランクリン巨大火成岩岩石区(FLIP)の規模
■ 4. FLIPの役割と気候サイクルモデル
- FLIPの概要:
- カナダの北極圏に位置する大規模な火成岩地域
- 約7億1700万年前に形成されスターティアン期の開始とほぼ同時期(100~200万年以内)
- FLIPと氷期開始の関係:
- FLIPにおける著しい火成岩の風化によって世界の大部分のCO2が消費された
- これが地球規模の氷期を引き起こす引き金になったと考えられる
- モデルが示す周期的サイクル:
- FLIPの風化作用によって大気中CO2が除去される → 氷期が訪れる
- 氷期によって風化作用が停止する → CO2が蓄積して温暖化が始まる
- 温暖化によって再びFLIPの風化作用が始まる → 次の氷期が引き起こされる
- このサイクルがFLIPの未風化玄武岩が枯渇するまで繰り返された
- このサイクルが約5600万年にわたって継続したものがスターティアン氷期であるとされる
■ 5. 研究の結論と限界
- 本モデルはスノーボールアースとスラッシュボールアースの説明における複数の矛盾点を解消する
- モデルは単純化されたものであり考えられるすべてのプロセスを網羅したものではない