■ 1. 研究概要
- ヒューストン大学とテキサス超伝導センターの研究チームが、常圧での超伝導転移温度の記録を151K(約マイナス122℃)に更新
- 従来の記録は1993年に同材料で達成された133K(約マイナス140℃)であり、33年ぶりの更新
- 室温(約25℃)までなお約140℃の差がある
■ 2. 超伝導体の概要と研究背景
- 特定の温度(転移温度)以下で電気抵抗がゼロになる特性を持つ
- 転移温度が高いほど冷却コストや必要装置を削減可能
- 実用化の課題として、多くの超伝導体は極低温まで冷却する必要がある
- 常圧で高い転移温度を示すことが実用化において重要(高圧維持の装置が不要なため)
■ 3. 使用材料と手法
- 使用材料:
- 1993年に報告された水銀系銅酸化物セラミック「Hg1223」
- 手法(圧力クエンチ):
- 絶対零度近くまで冷却しながら大気圧の最大30万倍の圧力を加え、超伝導になりやすい状態を作る
- 圧力をかけたまま所定の温度まで冷却後、圧力を急速に取り除く
- 高圧下で強められた超伝導の性質を常圧でも保持することが目的
■ 4. 実験結果
- 圧力クエンチにより151Kの転移温度を常圧で確認
- 効果は圧力除去後2週間持続
- 5つの異なる試料で再現性を確認
■ 5. 応用分野と将来展望
- 応用分野:
- 送電網(現状では電力の約8%が損失、損失低減によるコスト節約と環境負荷低減が期待)
- 医療(MRI)
- エネルギー(核融合)
- コンピューター(量子技術、高速電子機器)
- 研究の意義と課題:
- 圧力クエンチは「高圧を維持せずに高圧下の状態を保持できる可能性」を示す(チュー氏)
- 室温超伝導は1世紀以上にわたって「科学者の聖杯」と見なされてきた
- 151Kから室温までの差を埋めるには物理学者、材料科学者、化学者、エンジニアを含む研究コミュニティ全体の協調が必要