■ 1. 概要
- Microsoft Researchが、フェムト秒レーザーでガラス内部にデータを記録する「Project Silica」の新たな研究成果を発表
- 研究結果は学術誌『Nature』に掲載
- 家庭用キッチン用品にも使われるホウケイ酸ガラスへのデータ記録を実証し、実用化に向けて大きく前進
■ 2. 既存アーカイブ手段の課題
- 磁気テープやHDDは媒体寿命が数年から数十年程度と短く、長期保存に不向き
- 定期的な媒体への移行作業が必要となり、時間・機材・エネルギー面での負担が大きい
■ 3. Project Silicaのこれまでの経緯
- ガラス内部にナノスケールの記録層を作成し、数百年以上の保存を目指すプロジェクトとして推進
- 従来は高品質な石英ガラスを使用していたが、製造コストが高く入手先も限定的という課題があった
■ 4. 今回の技術的進歩
- 使用素材の転換:
- ホウケイ酸ガラス(調理器具やオーブン扉に使われる安価・入手容易な素材)でのデータ保存を実証
- ストレージコストおよびメディア確保という実用化上の課題が解決
- 新しいデータ記録方式「位相ボクセル(phase voxels)」の考案:
- 従来は複数のレーザーパルスが必要だったが、1回のパルスでデータを記録可能
- 書き込みプロセスの複雑さとコストが大幅に削減
- データ読み取り装置も簡素化され、必要なカメラが3〜4台から1台に削減
- 書き込み速度の向上:
- 熱シミュレーションに基づくマルチビーム配信システムを開発
- 複数ビームによる並列書き込みが可能となり、スループットが飛躍的に向上
- 4ビーム並列書き込みにより65.9Mbit/sの書き込み速度を実証
■ 5. 容量・記録密度
- 120mm四方・厚さ2mmの合成石英ガラス1枚あたり4.8TBの容量を達成
- ホウケイ酸ガラスでも2.02TBの実用的な容量を実現
- 記録密度は合成石英で1.59Gbit/mm³、300層以上の多層記録を実現
■ 6. 耐久性
- アレニウスの式に基づく加速劣化試験を実施
- 290℃の高温条件下でも1万年以上のデータ持続が示唆
- 室温環境ではさらに長期間の保存が期待される
■ 7. 現状と今後の展望
- Microsoft Researchは研究フェーズが現在完了したと表明
- 論文を公開し、他の研究者や開発者が成果を基に発展できるよう情報を共有
- デジタル情報の持続可能な長期保存ニーズに向けた取り組みを継続的に検討