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「万物は量子情報」と「万物は素粒子」との整合性について

要約:

■ 1. 問題の所在

  • 「万物は量子情報」という認識論的理解と「万物は素粒子からできている」という原子論的還元論の整合性に混乱が生じる
  • 混乱の原因は、原子論が前世紀に実在論として語られていたことにある
  • 21世紀現在、その「実在論」は実験的に否定されている

■ 2. 素粒子標準理論と実在概念

  • 標準理論は量子力学の中の一理論であり、「実在」という概念は既に実験的に否定されている
  • 実験物理学者がニュートリノなどの素粒子を「実在」と感じてしまう理由:
    • 素粒子反応データから各種物理量の保存則を繰り返し読み取る経験にある
    • パウリがニュートリノを理論提案した動機自体がエネルギー保存則の維持にあった
  • 実験家にとっての「実在」の本性は、物理量の保存則に過ぎない

■ 3. 素粒子標準理論の本質

  • 標準理論はエネルギー、運動量、バリオン数、レプトン数、ゲージ電荷などの多様な保存則を記述する理論
  • 各保存量が時間とともに各部分系間でどのようにやりとりされるかを記述する
  • 保存則を縦糸横糸として編み上げた織物(fabric)としての理論が「実在」の幻を生み出している

■ 4. 局所実在性の実験的否定

  • 2022年ノーベル物理学賞となったベル不等式の破れの実証により、局所実在性が実験的に否定された
  • 「そこにモノが在る」という直観的感覚は、天動説と同様に現代物理学の実験によって覆された
  • ニュートリノ実験でも、保存則の繰り返し経験が「実在」という幻を実験家の脳内に作り出しているに過ぎない
  • 標準理論を超える高エネルギー領域では、バリオン数やレプトン数などの保存則も破れることが予想されている

■ 5. 教育・学術の展望

  • 実在論的に標準理論を教える前世紀スタイルの講義は、今世紀後半には消えていると予測される
  • 「量子力学は情報理論であり、局所実在はそもそも存在しない」という事実が広く浸透していくと予測される
  • 量子ネイティブ世代の教員は「量子情報としての素粒子」としてニュートリノを教えることになる
  • 著者は量子力学を情報理論として強調した現代的教科書を講談社サイエンティフィクから出版している