■ 1. 背景: バッテリー劣化とリサイクルの課題
- リチウムイオンバッテリーは充放電を繰り返すことで容量・出力が低下し、交換・廃棄が必要になる
- バッテリーにはリチウム、ニッケル、コバルトなどの希少鉱物資源が含まれており、使用済みバッテリーの再利用が重要課題となっている
- 従来のリサイクル手法:
- 高温溶融や粉砕・薬品処理により金属を回収する方法が主流
- 電極という部品形状が失われるため、材料抽出・精製・再成形が必要となり、時間とコストがかかる
■ 2. DEER技術の概要と仕組み
- コーネル大学などの研究チームが「Direct Electrode-to-Electrode Regeneration(DEER)」を開発
- 電極を材料レベルまで分解せず、集電体(金属箔)に付いた状態のまま特殊な電気化学溶液に浸して再生する
- 劣化のメカニズムと対処:
- 充放電の繰り返しにより電極と電解液の境界にSEI(固体電解質界面)膜が形成・肥厚し、リチウムイオンの移動が阻害される
- 溶媒DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)を用いて肥厚したSEIを除去することで電極機能を回復させる
■ 3. 成果と経済性
- DEER処理後の再生セルは最大95%の容量を回復
- 充放電繰り返し時の安定性も改善
- 従来型リサイクル工程と比較して再生セルの製造コストを56%削減できる可能性を試算により示した
■ 4. 現状の限界と今後の課題
- 対象は主に健全性70〜80%程度を保った電気自動車用使用済みバッテリーであり、全ての劣化バッテリーを新品同然に回復させるものではない
- 今後の課題:
- 産業用バッテリーでの実証
- リチウム損失など別の劣化要因への対応
- 部品形状を保ったまま修理・再利用するリサイクルの実用化に近づいていると研究チームは述べている