■ 1. 揚水発電の基本
- 水力発電は川や湖の水が高所から低所へ流れる力でタービンを回して発電する方式
- 揚水発電は高低差のある2つの調整池の間で水を行き来させる蓄電方式
- 電力余剰時(夜間・太陽光発電過多時)に水をポンプで上部調整池へ汲み上げる
- 電力不足時に上部の水を下部へ流してタービンを回し発電する
- 調整池の水が繰り返し使用できるため「蓄電池」と称される
- 世界の揚水発電の総設備容量は約200ギガワットで、長期蓄電システム全体の90%以上を占める
■ 2. 揚水発電の課題
- 場所の制約が最大の弱点
- 急峻な山、水源となる川、ダムを建設できる谷の3条件が必要
- 上部・下部調整池間に大きな高低差が不可欠
- 日本では揚水発電の適地開発がほぼ出尽くした状態にある
■ 3. RheEnergiseによる技術革新
- イギリスのスタートアップ「RheEnergise」が水の代替となる高密度流体を開発
- 「高密度流体(High-Density Fluid)」の特性:
- 水の2.5倍の密度を持ち、コンクリートブロックが浮くほど重い
- 同一量・同一高さからより多くのエネルギーを取り出せる
- 従来より緩やかな丘でも揚水発電が成立する可能性がある
■ 4. 技術的課題の解決
- 高密度流体は通常、粘度も高くなりパイプ内でスムーズに流れないという矛盾が存在
- RheEnergiseはイングランドのエクセター大学と共同で矛盾を解決
- 質量の大部分が固形粒子で構成された液体を開発
- 高密度でありながら低粘度(サラサラした)性質を実現
- 流出時も土壌・地下水に浸透しない環境配慮型の設計を採用
■ 5. 実証実績と商業化計画
- 2026年1月、パイロットプロジェクトでピーク出力500キロワットの発電に成功
- パイロット設備の概要:
- 上部貯水槽は地上80mの高さに建設
- 直径2.5mのグラスファイバー製パイプで上下タンクを接続
- 両タンクは地中に埋設し、地上にはパワーハウスのみを露出
- 商業化目標: 5MWタービンを2〜4基用いた10〜20MW出力を想定、2028年末までに初の商用システム稼働を目指す
■ 6. 日本における可能性と課題
- 可能性:
- 日本の国土の約61〜75%が山地・丘陵地であり、都市近郊での活用が期待される
- 再生可能エネルギーの蓄電手段としての役割が見込まれる
- 課題:
- 初期投資が大きく、土木工事が不可避
- ナトリウムイオン電池・フロー電池・圧縮空気蓄電など競合技術が急速に発展
- RheEnergiseは「8時間蓄電条件でリチウムイオン電池システムの半分のコスト」と試算するが、実証はこれから