■ 1. 概要
- メルボルン大学などの研究チームが量子電池の開発に成功したと発表
- 光(レーザー)を利用して瞬時にワイヤレス充電が可能
- 量子力学の性質(重ね合わせ・量子もつれ)を利用してエネルギーを蓄える電池
■ 2. 構造
- 有機材料の層を銀で挟み込む構造(マイクロキャビティ)
- 銀が合わせ鏡となって光を閉じ込める仕組み
■ 3. 動作原理
- 充電:
- 超放射(多数の分子・原子が量子力学的効果によって協調し、光やエネルギーを一瞬で吸収する現象)を利用
- 量子もつれ(離れた粒子同士が連動し、片方の変化がもう片方に即座に反映される現象)によって各要素が結びつく
- 全体が協調して動くことで、容量が大きいほど充電速度が向上する可能性がある
- 放電:
- 超放射(複数の原子・分子が自発的に位相を揃えて電磁波を放出する現象)を利用
- 充電方式:
- 外部からレーザー光を照射することでワイヤレス充電を実現
- スマートフォンのワイヤレス充電とは異なり、大掛かりな設備が必要
■ 4. 従来電池との比較
- 従来の電池は容量に応じて充電時間が増加するが、量子電池ではこの問題を解決できる可能性がある
- 化学反応を利用する従来の電池は急速充電時に効率が低下するが、量子電池は理論上効率が低下しない
- 量子コンピューターとは異なり、室温での動作が可能(強結合とポラリトンの安定性による)
■ 5. 実験的証明
- 吸収スペクトルの測定結果:
- 通常の有機材料(黒色の線)は620nm・700nm付近に2つの谷を示す
- 今回の量子電池(赤色の線)はキャビティ内で光が閉じ込められ、光と物質が強結合するポラリトン状態が発生し、谷が3つに増加
- ポラリトン状態の種類:
- LP(低エネルギーポラリトン状態)
- MP(中間エネルギーポラリトン状態):光と物質の混ざり具合が最もバランスの良い状態であり、複数の分子が同じ量子状態に巻き込まれやすい
- UP(高エネルギーポラリトン状態)
- 以上の結果により、今回のデバイスは単なる合わせ鏡ではなく、量子電池として機能していることが確認されている
■ 6. 現状の課題・限界
- 充放電効率:
- 充放電効率は1%未満であり、充電時に投入したエネルギーの大半が損失となる
- 損失の原因:レーザー発振時の効率の低さ、電磁波から電流への変換損失
- 蓄電時間:
- フェムト秒レーザーを使用して充電した場合、蓄電時間は充電時間の約100万倍
- 100万フェムト秒はナノ秒単位の極めて短い時間であり、人間の感覚では認識できない
- スマートフォンの電池として使用した場合、充電完了と同時に放電してしまうほどの短さ
- 量子状態の不安定性:
- 揃えた分子の状態はわずかな外部ノイズで容易に崩壊する
■ 7. 実用性
- 電気自動車やスマートフォンの電池として使用することは現状では不可能
- 一般的にイメージされる電池としての実用性はない