■ 1. 研究概要
- 物質・材料研究機構(NIMS)が東北大学・東京大学などと共同で、リチウムイオン電池(LIB)用正極材と微生物が自発的に集合し、電源不要でリチウムイオンを選択的に回収できる原理を発見した
- 海水のような低濃度条件でも数時間以内に95%以上のリチウム回収が可能
- 従来技術と比較して大規模化および環境負荷低減が期待される
■ 2. 発見のメカニズム
- 正極材料(ラムダ型二酸化マンガン)のナノ粒子と自然界に広く存在する細菌を組み合わせると、両者が自発的にミリメートル規模の凝集体を形成する
- 微生物が正極材料に電子を供給する三次元的な「反応場」として機能する
- 配線も電源供給も用いずに、リチウムイオンを正極材料の結晶構造内に取り込むことに成功した
■ 3. 従来技術との比較と利点
- 微生物が電子供給源の役割を担うことで生まれる利点:
- 電源が不要
- 低濃度リチウムも回収可能
- 広面積電極が不要で省スペース
- 処理速度:
- 従来の電気化学的システムに匹敵する速度を実現
- 電源を使わない蒸発法やイオン交換法と比較して処理時間を大幅に短縮
- 経済性・環境性:
- 既存技術と同等の経済性を保持
- 水資源消費に伴う環境負荷を低減
■ 4. 従来技術の課題
- 塩湖蒸発法(主流のリチウム回収法):
- 大量の水を消費し、環境負荷が課題
- 電気化学的リチウム回収法:
- 材料の結晶構造内にリチウムのみを選択的に取り込む高い選択性と速度という利点を持つ
- 実用規模の処理には膨大な電極面積とそこへの電源供給を必要とする制約がある
- 電極という構造体に依存しない新たな反応原理の確立が求められていた
■ 5. 今後の展望
- パイロット規模での実証試験(実用化に向けた取り組み)
- 他元素の選択的回収への応用
- より環境負荷の低い手法の探索