■ 1. 研究の概要
- 台所アイテムの「ラップ」を用いた実験で、お茶の水女子大学の研究者らが「速度ジャンプ」という現象を初めて観測した
- 研究にあたったのは同大の奥村剛教授(58)と、院生だった野原葵さん(24)である
- 将来的にはモバイルバッテリーの発火問題の解決につながる可能性がある成果だという
■ 2. 速度ジャンプ現象について
- 速度ジャンプとは:
- 風船の破裂のように、わずかに入った亀裂がゆっくり進み、ある瞬間に一気に超高速になる現象である
- 身近な例としては風船の破裂が挙げられる
- 研究の背景:
- 古くからゴムで起こることが知られており、タイヤの耐久性を高める目的などで産業面でもさかんに研究されてきた
- 2017年に初めてメカニズムの理論ができ、ゴムに限らず長い鎖状の分子が集まったポリマー材料であれば起こる可能性があることが分かった
- しかし、ゴム以外で再現性の高い報告はない状態だった
■ 3. ラップを用いた実験
- 実験の目的:
- 身近なポリマー材料であるラップを使い、速度ジャンプが起こるかを確かめた
- 実験の手順:
- 幅15センチのラップをロールから切り出し、長さが1~2.5センチになるよう上下を固定した
- 片方の縁にハサミで1センチほどの切り込みを入れた
- 固定した上側を毎秒0.5~2ミリの速さで垂直に持ち上げ、亀裂が進む様子を通常速度と高速度の2台のカメラで撮影した
■ 4. 実験結果
- 速度の変化:
- ラップが引っ張られて1.5ミリほど伸びたところで、毎秒約200ミリだった亀裂の進む速さが毎秒約300メートルとなった
- 速さが1千倍以上にはね上がる様子を再現性高く観測できた
- 普遍性の確認:
- 速度ジャンプする際にラップが伸びた長さと、ジャンプ前後の亀裂の進む速さは、元のラップの長さやラップを引き伸ばす速さによらず一定であった
- この結果から普遍的な性質であることが分かった
■ 5. バッテリー発火問題への応用可能性
- リチウムイオン電池の構造:
- 内部は電解液にひたしたプラス(正極)とマイナス(負極)のシート状の電極がいくつも重なり合っている
- 両電極の間には仕切りシートが挟まっているが、何かの衝撃で破れると両電極がじかにふれて発火する
- 今回の発見との関連:
- 奥村さんによると、この仕切りシートの厚みや分子配列の規則正しさはラップに非常によく似ているという
- 研究を発展させれば、より強靱な仕切りシートの設計指針にもつながる可能性があるとしている