■ 1. 廃ペットボトル由来のクッキー
- 使用済みペットボトルのアップサイクル食品:
- 遺伝子改変した酵母を使い、PET樹脂と農業廃棄物をバニラ風味のプロテインクッキーに変える技術
- 開発したのは南イリノイ大学カーボンデール校の微生物学者らのグループ
- プラスチック汚染と食料不足の同時解決:
- 近い将来、少なくとも一部の人はこのクッキーを口にするようになる
- µBites:
- チームが生み出した一口サイズの食品の名称
■ 2. NASAのコンテストが起点
- Deep Space Food Challenge:
- NASAが主催する「Centennial Challenges」の1つ
- 長期の宇宙飛行で宇宙飛行士に食料をどう供給するかという課題に対し、新たな技術と手法の開発を求めるもの
- 南イリノイ大学チームの回答:
- プラスチックごみと植物廃棄物を、食べられる高タンパク質の栄養補助食品に変えること
- 大賞は別チームが受賞:
- 受賞したのはフロリダ州メリット島のInterstellar Lab
- 自律稼働する環境制御型温室で、微量栄養素を補う新鮮な野菜、マイクログリーン、昆虫を生産する仕組みを開発
- NASAによる研究継続の後押し:
- 大賞に届かなかったチームに対し、プラスチック由来のクッキー実現のため研究継続を促した
- 2026年8月24日の成果発表:
- シカゴで開かれた米国化学会(ACS)の展示会にて、准教授のLahiru Jayakody氏が率いるチームが発表
- クッキーの風味、香り、色をさらに改善した成果を示した
■ 3. 製造工程
- 出発点はPET:
- 使い捨てプラスチックの中でも特に一般的なポリエチレンテレフタレート
- 水や炭酸飲料の使い捨てボトルの多くに使われている素材
- 前処理による分解:
- PETをトウモロコシの茎や葉などの植物性廃棄バイオマスと混ぜる
- 水と酸素を高温高圧下で作用させ、炭素を豊富に含む分子へと分解する
- 遺伝子改変酵母による変換:
- 得られた分子を、遺伝子改変した食用可能な複数の酵母株に与える
- 酵母がプラスチックと農業廃棄物に由来する物質をタンパク質、脂肪、香味成分に変える
- バニラ風味を生む菌株:
- 改変したサッカロミセス・セレビシエがフェルラ酸をバニリンに変換する
- ビタミンA源を作る菌株:
- 改変したロドスポリジウム・トルロイデスがベータカロテンを作り出す
- 成形:
- 繊維、でんぷん、甘味料を加え、食用のどろりとした混合物(スラリー)にする
- 3Dプリンターに通して丸いクッキーの形に成形し、表面にギリシャ文字の「µ」をあしらう
■ 4. 試食は未実施
- 理論上は食べられる状態:
- 成形の時点でクッキーは食用となっている
- 人を対象とした試験の承認待ち:
- チームはまだクッキーを実際には試食していない
- ただし香りについては高い評価を得ている
■ 5. 食料危機への展望
- 当初の目的:
- 長距離の宇宙飛行や被災地に食料を供給するための野心的な取り組みとして始まった
- 実用化への道筋:
- 食料不足とプラスチック汚染に同時に対処する有望な解決策となりうる
- 世界の食料需要の見通し:
- 2050年までに35〜56%増加し、将来は世界人口の約30%が飢餓の危機にさらされると予想される
- その解決の道は微生物の活用にあるとJayakody氏は考えている
■ 6. コストの壁
- 現状は非常に高価:
- 生産コストは1kg当たり約60ドル(約9500円)
- 世界の飢餓問題に対する経済的な解決策とは到底言えない
- コスト低減の見込み:
- 酵母の効率を高め、生産規模を拡大すればコストを下げられる
■ 7. 社会受容という難題
- 個人的な関心:
- 食に関してはかなりの冒険派であり、どのような味なのか確かめてみたい
- 科学だけでは解決できない問題:
- ごみを原料にしたプラスチック由来のクッキーを一般の人々に受け入れてもらい、実際に食べてもらうことは難しい