■ 1. マグネシウム合金とカルシウム材料の課題
- マグネシウム合金の用途:
- 自動車、航空宇宙、生体医療など幅広い分野で使われる金属
- 強さと重さのバランスがよく、電子機器や航空宇宙機器にも向く
- カルシウムの役割:
- マグネシウムの強さや硬さなどの機械的性質を高めるために添加される
- 炭酸カルシウムや酸化カルシウムは合金づくりの重要な材料
- 従来のカルシウム材料の問題:
- 採掘した鉱石から複雑な工程を経て製造される
- その工程に多くのエネルギーを要する
- 金属製造の前に鉱石を加工してカルシウム材料を用意する手間がかかる
■ 2. 卵の殻への着目
- 卵の殻の成分:
- 95%が炭酸カルシウムで構成される
- 研究の狙い:
- NC State材料科学・工学科の助教バラト・グワラニ氏が論文の責任著者
- 生物由来のごみである卵の殻から、製造途中で必要なカルシウム材料を作れるかを検証した
- 鉱石の代わりに卵の殻を投入し、そのまま金属製造まで一気に進める発想
■ 3. 摩擦攪拌押出による合金製造
- 下準備:
- 円柱形のマグネシウムの塊に等間隔で複数の穴をあける
- 穴に細かくすりつぶした卵の殻の粉を詰める
- 加工装置:
- 塊を鋼鉄製の筒に入れ、中心に穴のあいた鋼鉄の棒(マンドレル)を上から下ろす
- マンドレルはすりこぎのように塊を押さえつけながら毎分300回転で回る
- 加工中に起こる現象:
- 卵の殻の粉が周囲のマグネシウムに混ぜ込まれ、殻の粒と金属の間に摩擦が生じる
- 摩擦により殻の炭酸カルシウムが酸化カルシウムとカルシウムに変化する
- 同じ過程で高強度の合金「Mg2Ca」も生成される
- 製品化:
- 上からの圧力で合金がマンドレルの穴から押し出され、棒状の製品になる
- 研究の成果:
- 卵の殻を使ってより強く硬いマグネシウム合金を作れることを示した
- 本研究は手法の実現性を確かめる「概念実証」として実施された
- 安価で持続可能な生物由来のごみから高品質で高価値な合金を作れるとグワラニ氏は評価する
■ 4. 手法の利点と応用可能性
- 最大の強み:
- 鉱石からカルシウム材料を作る工程をまるごと省略できる
- グワラニ氏が挙げる利点:
- 工程が少なくて済む
- 安定して持続可能な供給網を持てる
- 卵の殻が安価である
- 使用エネルギーがはるかに少ない
- 手法の位置づけ:
- 規模拡大が可能で、エネルギー効率がよく、環境に責任ある複合材料製造法とグワラニ氏は表現する
- 他の材料への応用:
- 摩擦攪拌押出はマグネシウムと卵の殻の組み合わせに限らない技術
- 研究チームは今年、磁性をもつサマリウム・コバルト(SmCo5)の粉をスクラップのアルミニウムにすり込んだ
- これにより磁性をもつ複合材料を作れることも示した
- 廃棄物の価値転換:
- 捨てられていたものをそのまま高価値な材料に変える道が見えてきた
- 毎朝捨てている卵の殻も、見方を変えれば金属の材料になりうる