■ 1. エナジーウィズによるニッケル亜鉛電池の開発発表
- 開発発表:
- 日本の電池メーカーであるエナジーウィズが、ニッケル亜鉛電池の開発を発表
- エナジーウィズの出自:
- 発足は2021年だが、得体の知れないベンチャー企業ではない
- 100年以上前に設立された日本蓄電池製造にまで歴史を遡ることができる
■ 2. ニッケル亜鉛電池の歴史と課題
- 発明の経緯:
- トーマス・エジソンが発明し、1901年に特許を取得
- サイクル回数が極端に少なかったため、実用化はされていない
- デンドライトの問題:
- 充電時に亜鉛電極から亜鉛の針状の結晶であるデンドライトが成長する
- 最終的には正極側と短絡して壊れる
- 空気亜鉛電池でも、充電時にデンドライトが成長する点は同じ
- エナジーウィズの主張:
- 亜鉛電極の劣化やデンドライト現象などを独自技術で抑制し、実用化を達成した
- ニッケル亜鉛電池に関する複数の特許を取得済み
■ 3. 特許技術のポイント
- 専用の電解液:
- 水酸化カリウムと、水酸化ナトリウムまたは水酸化リチウムの少なくとも一方を含む水溶液
- さらに以下などを含有してもよいとされる
- リン酸カリウム、ホウ酸カリウム、炭酸カリウム
- リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、水酸化リチウム
- 酸化亜鉛、酸化アンチモン、二酸化チタン
- ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤
- この電解液により、以下を実現できるとされる
- 高出力化
- サイクル回数の増加
- 安全性の向上
- セパレーター:
- 正極側と負極側にそれぞれ微多孔膜を配置
- 中間部分に不織布を配置し、デンドライトの貫通を防ぐ
- デンドライトの発生自体は抑制していないため、セパレーターは時間稼ぎに過ぎない
- 達成したサイクル回数:
- 数百回のレベルを記録しており、用途によっては十分に実用化できる
- クーロン効率:
- 充電容量に対する放電容量の比率を示す指標
- 70%から75%程度にとどまり、それほど良くない
■ 4. バイポーラ型鉛蓄電池との比較
- プレスリリースの性能値:
- エナジーウィズの鉛蓄電池製品と比べ、体積エネルギー密度は約1.4倍
- 同じく重量エネルギー密度は約2.1倍
- 数字の評価:
- 一見すごいが、古河電池のバイポーラ型鉛蓄電池と同等のエネルギー密度
- 鉛蓄電池でも設計を工夫すれば実現できる数字
- 実用性:
- バイポーラ型鉛蓄電池は大型電池でサイクル回数4500回とされる
- ニッケル亜鉛電池がよほど安くない限り、総合的にはバイポーラ型鉛蓄電池の方が実用的
■ 5. エナジーウィズと古河電池の関係
- 共通の親会社:
- 両社とも今年4月からエネソルブホールディングスの子会社
- 両社とも鉛蓄電池が主力商品
- 2025年度決算の比較:
- 売上高、営業利益ともにエナジーウィズの方が大きい
- 特に営業利益はエナジーウィズが10倍以上
■ 6. 鉛蓄電池市場での立ち位置
- エナジーウィズの沿革:
- 日本蓄電池製造と神戸電機製作所が源流
- 新神戸電機や昭和電工マテリアルズなどを経て、2021年に発足した国産バッテリーメーカー
- 100年以上の歴史があるが、市場シェアはそれほど獲得できていない
- 国内シェア:
- GSユアサが圧倒的に強く、国内シェアの約72%を掌握
- エネソルブホールディングスはわずか8%程度
- 店頭でよく見かけるパナソニックの鉛蓄電池も、現在はGSユアサに含まれる
- GSユアサの歴史:
- 1895年、19世紀にまで遡る
- 明治時代にはすでに鉛蓄電池を製造していた
- 競争環境:
- このような老舗企業に勝つことは容易ではない
- エネソルブホールディングスは難しい舵取りを迫られている
■ 7. 寿命表記と製品化の見通し
- 長寿命の表記:
- プレスリリースには、鉛蓄電池の約4倍の長寿命を実現したという記述がある
- これは軽負荷試験といった特殊な条件によるもの
- 普通に使用した場合の具体的なサイクル回数には言及していない
- 製品化の日程:
- 2023年の発表では、2027年頃の製品化に向けて取り組んでいるとしていた
- 2027年は来年だが、今回のプレスリリースでは具体的な製品化の日程を示していない
- 展示予定:
- 2026年10月13日から幕張メッセで開催の「ジャパンモビリティショー ビズウィーク2026」で展示
- 会場を訪れた際には一度ブースを見に行ってもよい
■ 8. まとめ
- ニッケル亜鉛電池の位置づけ:
- 重量エネルギー密度は通常の鉛蓄電池の2.1倍とされる
- アイデア自体は古くから存在する
- 将来的にバイポーラ型鉛蓄電池のライバルとして登場する可能性がある