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生命の起源巡る理論、彗星を契機とする定説が覆る可能性 新研究

要約:

■ 1. 彗星起源説を揺るがす新研究

  • 新たなシミュレーション結果:
    • 生命誕生のきっかけを彗星とする一般的な説が崩れる可能性がある
    • 数十年にわたり科学界で信じられてきた理論に異議を唱える内容
  • 定説の歴史:
    • 彗星が生命の起源に関わるとする説は少なくとも1961年まで遡る
    • 生命の材料が宇宙から飛来したとする「パンスペルミア説」は1908年に科学的仮説として提唱された
  • 研究の要点:
    • 彗星が運んだとされる壊れやすい有機分子は、衝突の衝撃で破壊されるとみられる

■ 2. 彗星説が唱えられてきた背景

  • 原材料の不確かさ:
    • 地球上の生命には複雑な有機分子が必要
    • 初期地球に前生物的化学の原材料が十分にあったかは明らかではない
  • 「汚れた雪玉」:
    • 彗星は塵と氷で構成され、有機物も含む
    • この組成から、彗星が地球表面に水や有機分子をもたらしたという説が唱えられてきた

■ 3. シミュレーションの方法と結果

  • 掲載誌:
    • 学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に10月28日に掲載された
  • 初期地球への彗星衝突:
    • 40億年以上前、直径100メートル超の彗星が10万個以上地球に衝突した可能性がある
    • その衝突のほとんどは、生命誕生に必要な分子が耐えられる規模ではなかった
  • 研究手法:
    • 彗星の形成と進化に関する最新モデルを使用した
    • 初期地球の期間を10万回シミュレーションした
    • 筆頭著者はケンブリッジ大学天文学研究所の博士課程で研究したリチャード・アンスロー氏
  • 結果:
    • 初期地球の表面環境の知見に基づくと、生命誕生につながる衝突は一度も発生しなかった
  • 衝突速度の問題:
    • 彗星の衝突速度が速すぎるため、有機分子を壊さずに届けられたものはあってもごくわずか
    • 彗星は前生物的化学において、従来考えられていたほど有用ではない可能性がある

■ 4. 偶然の成功の可能性

  • 完全否定はできない:
    • 極めて稀に偶然の衝突が成功した可能性は残る
  • 「完璧な配置」の必要性:
    • 液体の水が存在する必要がある
    • 生命維持に必要な他の化学物質も揃っている必要がある
  • 総合的な評価:
    • こうした条件がすべて重なることは考えにくい
    • 全体として彗星が生命の起源に関与した可能性は低い

■ 5. 焦点となったシアン化水素(HCN)

  • HCNの位置づけ:
    • 自然界に存在し、前生物的化学における重要な前駆物質
    • ハレー彗星やヘール・ボップ彗星をはじめ、数十個の彗星で検出されている
  • HCNの性質:
    • 水素、炭素、窒素から構成される
    • 水と結びつくことで、たんぱく質を構成するアミノ酸を形成する可能性がある
    • 他の研究でも生命の起源を解明する鍵となる物質として注目されてきた

■ 6. 彗星による供給が困難な理由

  • 高温・高圧による破壊:
    • 彗星は衝突時に非常に高い温度と圧力にさらされる
    • 近年の研究では、この環境と衝突の衝撃で生命の材料となる分子の多くが破壊され得る
  • 濃度不足:
    • 衝突に成功しても、十分な濃度で化学物質が供給される可能性は低い
    • 海に衝突した場合はすぐに拡散・溶解してしまう
  • 他の前駆物質の欠如:
    • 前生物的化学にはリンや硫黄を含む化合物など多くの前駆物質が必要
    • これらは通常彗星には含まれていない

■ 7. 彗星に代わる説

  • 原始スープ説:
    • 生命誕生前の有機物が溶け込んだ海自体が、生命に必要な分子を合成した可能性がある
  • 小惑星供給説:
    • 小惑星は地球に飛来する頻度が高く、衝突速度も比較的遅かった
    • 小惑星ベンヌやリュウグウのサンプルには、たんぱく質を構成するアミノ酸の大部分が含まれていた

■ 8. 太古の火星の可能性

  • 火星での衝突条件:
    • 火星は地球よりはるかに小さく、太陽からも遠い
    • そのため彗星の衝突速度は地球よりずっと遅くなる
    • 地球ではHCNの大部分が破壊されたが、火星ではそれほどではなかったと考えられる
  • 火星生命への示唆:
    • かつて火星に生命が存在したのかという長年の問いに新たな視点をもたらす可能性がある

■ 9. 彗星説は依然有効とする見方

  • チャン氏の指摘:
    • ロイヤル・ホロウェイ・ロンドン大学の地球科学准教授クイニー・チャン氏は本研究に関与していない
    • HCNは地球の大気に突入する以前に、彗星内ですでに化学反応を起こしていた可能性がある
    • その過程でたんぱく質の構成要素など、生物学的に重要な化合物が生成されたかもしれない
    • これらの化合物は揮発性が低く、衝突の過酷な環境でも生き残る公算が大きい
  • 彗星の役割の再評価:
    • HCNを無傷で届ける効率が悪いことだけでは、彗星の役割を完全には排除できない
    • 彗星は他の重要な有機化合物を供給し、生命誕生以前の地球の有機物ストックに寄与した可能性がある

MEMO: