和歌山市周辺に最近まで、変わったサルが生息していた。タイワンザルとニホンザルの交雑種。いずれも見た目は似ているが、しっぽの長さが異なる。「日本在来の霊長類は、人間とニホンザルだけ。世界的にも貴重な環境は維持しないといけない」。霊長類学者たちは強調する。今は、交雑種もタイワンザルも姿を消した。和歌山県が捕獲して安楽死処分したからだ。
人間の場合、海を越えて自由に行き交うことは「多様性」の実現とされる。しかし人の手を介して海を越えてきたサルや、その結果生まれた交雑種は、殺処分の対象となってしまう。そこに釈然としない思いが残りはしないか。
「外来種はとりあえず殺してもいい」という風潮を根付かせたことは本当に正しかったのだろうか。
自然は移り変わるものであるが、その変化を押し留める意義とは。
動物に対しては「純粋な血統」を重視しつつ、人間は多様性を尊ぶという二重規範の倫理性の綻びをどう解決していけるのか。
個人的には、無理では? と思っている。