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「悪魔の詩」著者のサルマン・ラシュディ氏、NY州の講演で刺される

小説「悪魔の詩」を書いたことで論争を巻き起こし、長らく殺害予告の対象になってきた作家、サルマン・ラシュディ氏(75)が12日昼、講演のために訪れていた米ニューヨーク(NY)州ショトーカで男に首や腹部を刺された。州警察が発表した。

州警察によると、男は現場で身柄を拘束され、ハディ・マタール容疑者(24)と特定された。現場から約500キロ離れたニュージャージー州に暮らし、動機は明らかになっていない。

現在は米国に暮らすラシュディ氏は、インド出身で英国籍を持つ。1981年、インドの独立前後の様子をテーマにした小説「真夜中の子供たち」で権威のある文学賞、英ブッカー賞を獲得した。

88年には、イスラム教の預言者ムハンマドの生涯を題材とした「悪魔の詩」を出版。同作もブッカー賞の最終候補になった。ただ、登場人物の売春婦たちがムハンマドの妻たちの名前だったことなどから、「イスラム教を冒瀆(ぼうとく)している」との意見も多く出た。

イランの当時の最高指導者、ホメイニ師は「ファトワ」(宗教見解)として、89年に「死刑」を宣告。イラン国内の財団は、ラシュディ氏を殺害した者に330万ドルの「懸賞金」をかけていた。

同書は日本でも90年に出版された。翻訳を務めた筑波大助教授、五十嵐一さん(当時44)は91年7月、何者かに大学構内で殺害された。だが、容疑者が検挙されないまま、2006年に時効が成立した。

さて、賞金は支払われるのか?